カレントテラピー 34-3 サンプル

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82 Current Therapy 2016 Vol.34 No.3288通帳やネックレスなどを嫁が盗んでいくと訴える.金銭への執着が著明で,昔の勤務先の給与明細と現在の銀行の残高が合わないと言って銀行にクレームを頻繁につけている.夜寝ずに探し物に終始する.易怒性が目立つ.同じ衣服を1週間着ている.MMSE:25点,ADAS-J cog.:10点.夫には,行動や感情,言動の活発化を期待しコリンエステラーゼ阻害薬のいずれかを選択する.妻にコリンエステラーゼ阻害薬から開始すると易怒性の亢進を生じる可能性があるため,メマンチンから開始するとよい.Ⅴ 介護する側の条件から使い分けを考える薬効よりも服薬介助を行う家族や介護施設の条件を勘案し抗認知症薬を使い分けるほうがよいかもしれない(表2).例えば,同居家族全員が朝早くから仕事に出かけてしまい,帰宅する夕方以降でないと服薬介助ができない場合には1日1回の服薬で済む薬剤を処方するしかない.身体疾患の治療で多数の経口薬を服薬しているのでこれ以上経口薬が増えることを家族が心配しているときには貼付薬を選択するとよい.独居患者さんや家族の都合で毎日服薬介助ができない場合には半減期の長い薬剤を選択すると効果減弱が少なくて済むかもしれない.錠剤以外の剤形を希望する場合があるかもしれない.そのときには液剤やゼリー剤,細粒など家族が希望する剤形のある抗認知症薬を選択するとよい.家族は,最も効果のある抗認知症薬を出して欲しいと望んでいるのであろうが,その選択基準は難かしい.Ⅵ 重症度から使い分けを考えるアルツハイマー型認知症の重症度から抗認知症薬を選択する考えは,ガイドラインと同じであるが,筆者はやや異なった使い方をしている.以下の記述は筆者が実臨床で実行している使い分けである3)~6).軽度から中等度アルツハイマー型認知症で活発な周辺症状が目立たないおとなしいタイプには,行動や感情,言動の活発化を期待しコリンエステラーゼ阻害薬を第一選択薬とする(図1).認知症が軽度の段階ではコリンエステラーゼ阻害薬の維持量を継続しながら経過をみていく.もし,いずれかのコリンエステラーゼ阻害薬で副作用がみられたときには他のコリンエステラーゼ阻害薬に変更するとよい.中等度の段階では,コリンエステラーゼ阻害薬を開始後,時期をみてメマンチンの追加・併用を考える.メマンチンを併用する時期として二つが考えられる.一つ目は,経過中に易怒性や落ち着きのなさ,暴言,介護に抵抗するなど不都合な症状が患者さんに出現したときであり,メマンチンによる行動や感情,言動の安定化を期待して併用を開始する方法である.従来,コリンエステラーゼ阻害薬服薬中に易怒性や不穏などがみられた際,薬剤の副作用と考え減量あるいは中止という選択を行うことが多かったが,メマンチン発売後では,コリンエステラーゼ阻害薬の維1)家族全員が日中働いている,朝早くから出かけてしまう⇒1日1回の服薬ですむ薬剤の選択2)経口薬が多いからこれ以上経口薬を増やしたくない⇒貼付薬の選択を考える3)毎日患者さんの服薬介助ができない事例,独居の患者さん⇒血中半減期の長い薬剤の選択(ドネペジル,メマンチン)4)身体疾患の薬などで1日2回服薬介助をしている⇒1日2回服薬でもよい5)錠剤を飲みたがらない,飲めないので錠剤以外の薬を出してほしい⇒液剤やゼリー剤,ドライシロップを選択する6)効果を最も期待できる薬剤を出してほしい⇒選択基準が最も難しい…表2服薬管理を行う家族の条件を勘案して抗認知症薬を選択する