カレントテラピー 34-3 サンプル page 22/32
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カレントテラピー 34-3 サンプル
80 Current Therapy 2016 Vol.34 No.3286Ⅰ はじめにアルツハイマー型認知症に対する根治的治療薬がない現在,認知症症状の進行抑制効果を期待できる薬剤(抗認知症薬)の使用法や使い分けを習得しておくことが臨床医に求められる.コリンエステラーゼ阻害作用を有する抗認知症薬としてはドネペジル(アリセプトR)とガランタミン(レミニールR),リバスチグミン(リバスタッチR,イクセロンR)の3剤,NMDA受容体拮抗薬としてメマンチン(メマリーR)が上市されている.表1に4剤の臨床的特徴を示した.Ⅱ 抗認知症薬を開始する前に行うことアルツハイマー型認知症と診断後,多くの事例では抗認知症薬を開始することになるが,漫然と処方することは望ましくない.現在,使用できる抗認知症薬は,根治的な治療薬ではないこと,抗認知症薬に過大な期待をしてはならないことを患者さんならびに家族に明確に伝えることが最も重要である.抗認知症薬を服薬していても,認知症症状は進行・悪化することが多い.服薬管理の中心となる人間を決めておくことも必要である.抗認知症薬を服薬する意義を理解できる家族がいるならば,その後の長期的な通院と服薬が担保される可能性が高い.個々の抗認知症薬でみられる可能性が高い副作用についてもわかりやすく説明しておきたい.Ⅲ ガイドラインからみた抗認知症薬の使い分け『認知症疾患治療ガイドライン2010 コンパクト版アルツハイマー型認知症治療薬の使い分け川畑信也** 八千代病院認知症疾患医療センターセンター長認知症の早期発見と予防・治療─ 認知症500万人時代に求められるもの抗認知症薬を使い分ける場合,アルツハイマー型認知症の重症度による使い分け以外に患者さんが示す行動や感情,言動によって使い分けをすることもできる.おとなしいタイプのアルツハイマー型認知症には,コリンエステラーゼ阻害薬を選択すると患者さんの活発化を期待できる.易怒性や興奮,不穏など,やや活発な周辺症状が目立つタイプにはメマンチンを選択する.服薬介助を行う家族や周囲の人々の状況で抗認知症薬を選択する考え方もある.毎日服薬管理ができない事例には,半減期の長い薬剤を選択すると効果減弱が少ないかもしれない.経口薬が多数処方されている場合には貼付薬を選択するとよい.コリンエステラーゼ阻害薬間における変更の時期や切り替えの方法に関して定説はない.抗認知症薬をいつ中止するかの基準はないが,経口摂取ができなくなった時期と寝たきりに移行した場合には中止を考えてもよいかもしれない.a b s t r a c t