カレントテラピー 34-3 サンプル page 17/32
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カレントテラピー 34-3 サンプル
Current Therapy 2016 Vol.34 No.3 65271Ⅰ 認知症医療の転換点2004年10月に京都で開催された国際アルツハイマー病協会国際会議(International Conference ofAlzheimer’s Disease International:ADI国際会議)には,世界67カ国から認知症の本人,家族,医療・介護従事者や研究者,自治体関係者など延べ4,000人が集まり,「高齢化社会における痴呆ケア」と題し認知症ケアの時代の到来が宣言された.「公益社団法人認知症の人と家族の会」(以下,本会)は,ADIに加盟する国内唯一の組織であり,この会議を主催した.このとき,国内外の認知症の本人が実名で自身の闘病体験をスピーチしたことは大きな波紋を呼んだ.折しも同年の暮れに「痴呆」から「認知症」へと症候群の呼称が変更された.この認知症という名称への変更にはたして意味があったのかという意見をいまだに耳にする.「認知力の低下は総じて加齢による老化現象である」,「認知症になったら恥ずかしい」,「認知症だけにはなりたくない」,など認知症にまつわる偏見,社会からの阻害に対し,名称の変更はどれくらい貢献できているのだろうか.さかのぼり2000年4月に施行された介護保険とほぼ同時期,1999年10月に国内で初めて抗認知症薬である「アリセプトR」が承認され,それまではほとんど認知症の治療法がなかったなかでの希望となった.それから10 年を経て2011年1月から3月にかけ「メマリーR」,「レミニールR」と「イクセロン(リバスタッチR)」が承認され,選択肢が広がったことは,認知症医療にとって大きな転換点となったといえる.* 公立大学法人新潟県立看護大学看護学部准教授/前公益社団法人認知症の人と家族の会理事認知症の早期発見と予防・治療─ 認知症500万人時代に求められるもの「認知症の人と家族の会」と認知症医療原 等子*本会は1980年に結成され,全都道府県に支部をおき11,000人の会員を擁する公益社団法人である.結成当時,認知症に対する医療はほとんどなかったが,相談にのってくれた医師たちの支えで当事者のつどいを始めた.今では年間3,500回以上,延べ44,000人が各地のつどいに参加している.その間,認知症は早期診断が可能となり,1999年に待望の治療薬が承認された.また,ほぼ同時に始まった介護保険制度は介護家族にとって大きな支援となった.ケア方法の研究開発も進み,認知症の人の特性に合わせたかかわりや環境づくりが定着しつつある.2004年に京都で開催された国際アルツハイマー病協会国際会議以降,認知症の本人が実名を公表し自らの闘病体験を発信するようになった.2015年初めに改正された新オレンジプランにも,認知症の本人や家族の意見を重視することが盛り込まれた.認知症の診断後のサポート体制を充実するとともに,認知症の本人と家族が穏やかに地域で暮らし続けられるよう,認知症の専門家以外にも理解を広めていく必要がある.