カレントテラピー 34-3 サンプル page 15/32
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カレントテラピー 34-3 サンプル
50 Current Therapy 2016 Vol.34 No.3256きた.TTRがニューロンで産生されているという報告もある1994年にTTRはAβオリゴマーと結合してその凝集を阻害することが報告され,さらにADのマウスモデルでTTRがAβのシナプス毒性を抑制することが示されている12),13).このように,アポリポタンパク質やTTRはAβと結合してその毒性を抑制し,また脳内からAβを排出するいわゆるシークエスータンパク質であり,その量や機能が低下することがADの発症の背景にあると考えられる.Ⅳ MCIスクリーニング検査MCIスクリーニング検査では,血中のTTR, apoA1,非活性型C3とAPOE の遺伝子型を調べている14).正常の中枢神経系においては,シークエスタータンパク質による神経保護作用がもともと備わっており,Aβのシナプス毒性によるADの発症を抑制していること,加齢によるこれらの神経保護タンパク質の量や機能の低下が,ADの発症のリスクを高めると考え,われわれは,臨床研究を行った.その結果,縦断研究においてアポリポタンパク質をはじめとして,これらのシークエスタータンパク質はMCIの進行とともに減少することがわかった(図3).横断研究においてもMCIで有意に減少するもの,ADで有意に減少するものが認められた.TTR, apoA1, 非活性型C3の臨床有効性については,認知機能健常 vs. ADにおいて,receiver operating characteristic(ROC)曲線におけるarea under curve(AUC)値がそれぞれ0.73,0.67, 0.83, 認知機能健常者 vs. MCIにおいて, 0.68,0.65, 0.66であった.そのほかのタンパク質についても減少ないしは増加が認められた.さらにこれらTTR,apoA1,非活性型C3を用いて多重ロジスティック回帰法を用いたマルチマーカーによる判別解析を行ったところ,認知機能健常者 vs. ADにおいて感度92%,特異度68%,認知機能健常者 vs. MCIにおいて感度90%,特異度50%の結果が得られた.これにMMSEの結果を加えると,認知機能健常者 vs. ADにおいて感度100%,特異度96%,認知機能健常者 vs. MCIにおいて感度87%,特異度82%となった.以上のように,MCI およびAD のスクリーニング検査として,Aβと結合してその毒性の抑制や排出にかかわるシークエスタータンパク質の量の変動を調べることは臨床的にも有用であり,その減少が間接的に認知機能の低下につながる.これらのタンパク質の血中量に影響を与える因子として,栄養状態,慢性炎症,免疫機能の異常なとが挙げられる.なおプレリミナリーな研究では,認知症予防介入による検査値の改善が認められている(未発表データ).Ⅴ おわりに国内外で認知症予防の取り組みが行われつつあるなか,早期介入のきっかけとなる検査,予防効果を定量化できる検査としては初めてのものであり,今後の認知症の予防に資することが期待される.本検査の精度を上げるとともに,本検査が介入効果の指標となるよう今後も研究を進めたい.参考文献1)朝田 隆:都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応.厚生労働科学研究費補助金(認知症対策総合研究事業)総合研究報告書, 20132)Alzheimer’s Association:Alzheimer’s Association Report:2014 Alzheimer’s disease facts and figures. AlzheimersDement 10:e47-e92, 20143)Shankar GM, Li S, Mehta TH, et al:Amyloid-beta proteindimers isolated directly from Alzheimer’s brains impair synapticplasticity and memory. Nat Med 14:837-842, 20084)Palop JJ, Mucke L:Amyloid -beta -induced neuronal dysfunctionin Alzheimer’s disease:from synapses toward neuralnetworks. Nat Neurosci 13:812-818, 20105)Sperling RA, Aisen PS, Beckett LA, et al:Toward definingthe preclinical stages of Alzheimer’s disease:recommendationsfrom the National Institute on Aging -Alzheimer’sAssociation workgroups on diagnostic guidelines forAlzheimer’s disease. Alzheimers Dement 7:280-292, 20116)Corder EH, Saunders AM, Strittmatter WJ, et al:Gene doseof apolipoprotein E type 4 allele and the risk of Alzheimer’sdisease in late onset families. Science 261:921-923, 19937)Koldamova RP, Lefterov IM, Lefterova MI, et al:ApolipoproteinA-I directly interacts with amyloid precursor proteinand inhibits A beta aggregation and toxicity. Biochemistry40:3553-3560, 20018)Paula-Lima AC, Tricerri MA, Brito-Moreira J, et al:Humanapolipoprotein A-I binds amyloid-beta and prevents Abetainducedneurotoxicity. Int J Biochem Cell Biol 41:1361-1370,