カレントテラピー 34-3 サンプル

カレントテラピー 34-3 サンプル page 12/32

電子ブックを開く

このページは カレントテラピー 34-3 サンプル の電子ブックに掲載されている12ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
カレントテラピー 34-3 サンプル

Current Therapy 2016 Vol.34 No.3 47253だとすると,いつから予防すればいいか,どのような人が予防するのが必要かということが課題となる.そのためには,認知機能の低下や認知症の進行をモニタできるようなバイオマーカーを用いた早期発見が必要である.早期の認知症やMCIを早期発見・介入するためのスクリーニング法としては,侵襲性が低く,簡易な方法で,かつハイスループットで実施できることが求められており,健康診断などで利用されている血液検査が最も望ましい.通常の健診や血液の生化学検査での採血のタイミングを利用すれば,広くひろまる可能性も高い.しかし現状は,煩雑な検査方法,患者の受診への抵抗により,認知症の早期発見が遅れている.現在の認知症の主な検査方法は,computedtomography(CT),magnetic resonance imaging(MRI), single photon emission computed tomography(SPECT)などの画像検査,そのほかに神経心理検査などがある.CTやMRIは検査費用が高く,実施できる施設は比較的大きな病院に限られる.また,診断を行うのは,内科,神経内科,精神科が主な診療科になっている.内科を除き,神経内科,精神科など特殊な診療科が多く,患者から見ると少なからず気軽に受診を行おうと思える診療科ではない.実際に,各診療科も認知症診断を行う外来を「物忘れ外来」など患者が受診に際して抵抗がないよう配慮をしており,東京都の認知症専門医のいる病医院のうち約40%がそれに該当する.しかしながら,認知症や物忘れに対し不安がある患者にとっては,いまだ最初にどの診療科を受診したらよいかがわかりづらく,認知症の早期発見の機会が遅れる原因となっている.このため,認知症を早期に発見するために,患者が受診しやすい環境作りと,簡易的な検査方法が求められている.本稿で紹介するMCIスクリーニング検査は,認知症やMCIのリスク検査として,すでに国内で1,000以上の医療機関で導入されている.最初にADの病態とバイオマーカーについて述べた後に,本検査で計測するタンパク質について解説する.Ⅱ アルツハイマー病の病態と予防についての最近の研究ADの発症機序にはアミロイドβ(amyloid β:Aβ)が深く関与している(アミロイドカスケード仮説).ADの発症する20年近く前から原因物質であるAβが凝集体を形成し,脳のなかに少しずつ蓄積する.可溶性のAβオリゴマーはシナプス毒性があり,神経細胞にダメージを与え,記憶や認知機能を担うシナプスを障害する3),4).Aβによって障害をうけたシナプスの状態が病態の進行に関係すると考えられる.最近で認知機能MCI健常MCI異常認知症時間軸Aβの蓄積シナプス損傷脳萎縮認知機能低下Tauによ臨床症状る神経損傷認知症加齢プレクリニカル期プレクリニカル期臨床上の病期AD-Pathophysiological AD-Clinical図1 ADなどの認知症の病期についての新しい概念ADはContinuum(連続性)のある病態である.従来,臨床症状によって,日常生活の支障の有無によりADなどの認知症の診断がなされてきた.最近の多くの研究をもとに,AD発症の最も早期ステージが再定義され,プレクリニカル期という概念が提案された.これはADの主たる要因と考えられるAβが脳内に蓄積し,その過程におけるシナプス損傷が起こり,さらに脳萎縮,認知機能低下と臨床症状に進む時間的にも病態としても連続した過程である.この仮説に基づき,従来の臨床診断によるADをAD-clinicalと,臨床症状がなくとも病態として存在する時期をAD -pathophysiologicalと定義した.早期診断・介入はこのプレクリニカル期から行われる必要があるといわれている.