カレントテラピー 34-2 サンプル page 7/28
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カレントテラピー 34-2 サンプル
10 Current Therapy 2016 Vol.34 No.2114(持続性および長期持続性心房細動)であり,持続性心房細動のアブレーション治療が決して特別な治療ではなくなっていることがわかる.また抗不整脈薬治療を施行せずにいきなりカテーテルアブレーション治療を施行する症例は年々増加し約1/3(32.6%)にまでのぼっている.つまり発作性および薬物治療抵抗性というガイドライン上の記載条件は現実的にはそれほど重視されていない状況が見えてくる.自覚症状の有無に関してはJ-CARAFでは検討されておらず,現場では自覚症状の有無が治療適応の決定の主たる要因ではないことを示しているともいえるかもしれない.Ⅴ ガイドラインと実臨床の解離前述したようにガイドラインは薬剤抵抗性,有症候性そして発作性という3点を基本として治療適応を分類している.それではこのガイドラインを基準として次のようなケースについて考えてみよう.・40歳の男性が無症状の持続性心房細動を健診で発見された場合ガイドラインを見るとクラスⅡbとなり,「有益であるという意見が少ない」という分類になる.ガイドラインを単純にそのまま受け取る臨床医であれば,「特に困ってもいないだろうし,手術適応も低く,このまま様子を見ればよいですよ」ということになってしまいそうだが,それで本当に良いのだろうか?この患者はアブレーション手術を行わなければ,生涯にわたって心房細動患者として生きてゆくことになり,今後半世紀の間に心不全や脳梗塞などの合併症を発生する可能性も十分にある.現在のカテーテルアブレーションのレベルであれば根治できる可能性は十分にあり,手術のリスクを鑑みても,早い時期に根治治療をしたほうが良いように思える.今現在症状があるかどうかということや,持続性心房細動であることはこの症例の手術適応を考えるうえで大きな意味があるとは思いにくい.しかし一方で,これがもし高齢者(例えば75歳の患者)であれば,話は一変する.無症状で困っていない高齢者に対して,治りにくい持続性心房細動の手術などしなくても,抗凝固治療をしっかりと行いながら心房細動とうまく付きあってゆくのが最善の道といえるかもしれない.J-CARAF調査から見えてくるのは,現場の医師が心房細動アブレーションの適応を考える際に基準としているのは,薬剤抵抗性とか,有症候性および発作性というようなことよりも,患者の心房細動を侵襲的手術によって治すことが望ましいかどうか,という常識的な判断なのだということである.そう考えるとガイドラインには年齢という重要な因子が入っていないことに気づかされるが,個人によって「肉体年齢」は大きく異なるために,年齢をどのようにガイドラインに反映させるかは非常にデリケートで難しい問題とも言える.Ⅵ 新しいタイプのカテーテルアブレーション治療従来心房細動カテーテルアブレーションのガイドラインがいくつもの制限をつけてその適応を狭くする方向に働いていたのは,その手技が高度な技術を要し,治療のリスクも低くないためであった.近年,従来のカテーテルアブレーションの概念を大きく変える技術革新があった.これは先端がバルーン形状になっているカテーテルを用いて肺静脈入口部に密着させ,冷却剤(液化亜酸化窒素ガス)を用いて冷凍凝固させるものである.従来法よりも大幅に難易度が低下するとともに,その効果および安全性において高周波焼灼法と遜色がないことが報告されている5).国内での成績および安全性評価はまだ確立したとは言えないが,将来展望として,このような技術革新を繰り返してゆくことで心房細動アブレーションのガイドライン上の高いハードルが少しずつ低下してゆくことが期待される.Ⅶ 心房細動アブレーションがもたらす新しいエビデンス心房細動を根治させることは,その症状から回避できるだけでなくもっと多くの重要な意味があることが徐々に明らかとなってきている.以下に順を追って概説してみよう.