カレントテラピー 34-2 サンプル page 24/28
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カレントテラピー 34-2 サンプル
Current Therapy 2016 Vol.34 No.2 81185心房細動アブレーション周術期の抗凝固療法桜橋渡辺病院心臓血管センター不整脈科長・内科部長 井上耕一心房細動(atrial fibrillation:AF)アブレーションは観血的処置であり,心タンポナーデ等の出血のリスクを伴う.一方でAF自体が血栓塞栓症のリスクであるうえに,術中は左房へのカテーテルの挿入や焼灼による熱により,また術後は左房内膜の焼灼で起こる内皮障害により,心原性脳梗塞を含めた血栓塞栓症のリスクが増える.出血と梗塞のリスクの両方を伴う手技であるため,周術期の抗凝固療法をどのように行うかは,安全にAFアブレーションを行ううえできわめて重要である.アブレーション術前は,元来は抗凝固薬の適応のないCHADS2スコア0点,1点の患者を含む全アブレーション症例に,ワルファリンもしくは新規経口抗凝固薬(NOAC)を導入して安全に服薬できることを確認したうえで治療が行われるのが通常である.左心内に血栓があった場合はアブレーション時の血栓塞栓症のリスクが高まるため,術前3週間以上の予防的抗凝固療法もしくは術直前の経食道心エコーによる左房内血栓の有無の確認が推奨されている.アブレーション中はヘパリンを静脈内投与しながら行う.経口抗凝固療法をどうするかに関しては議論があったが,「ワルファリン継続下」と「ワルファリン中止とヘパリンブリッジ」でのアブレーションを比較する数多くの観察研究とひとつの無作為化研究が行われ,ワルファリン継続下でのアブレーションのほうが,出血性合併症・血栓塞栓症のいずれも少ないという結果で一貫していた.このため「ワルファリン服用継続下でのAFアブレーション」が推奨され,現在でもゴールドスタンダードである.すでに,本邦のAFアブレーションの70%以上はNOAC服用下で行われている現実がある.NOACの周術期の使用法に関しても,「NOAC継続下でのアブレーションはワルファリン継続下でのものと安全性・有効性ともに遜色はない」という報告が出始めている.一方で,NOACの特徴のひとつとして,内服後は効果が速やかに得られ,中止後は速やかになくなることが挙げられる.この特徴により,最小限の休薬で治療を行うことで術前後の抗凝固薬中止のリスクを最小限にしながら,術最中の出血リスクを減らすことができるかもしれない.NOACのベストな服用プロトコルを見出すことも今後の課題である.アブレーション術後は,AFアブレーションを受ける全患者において最低2カ月間は抗凝固療法を行うことをガイドラインは推奨している.その後は個々の症例で出血と梗塞のバランスを見ながらどうするかを決めていくことになる.以上をまとめると,以下のようになる.術前: 3週間以上の抗凝固療法(ワルファリンもしくはNOAC)が好ましい.術中: ワルファリンの場合は継続下でのアブレーション治療を行う. NOACの場合は,継続もしくは最低限の中止での治療を行う.術後: 全例で2カ月以上の抗凝固療法を行う.それ以降に関しては症例ごとに決定する.カテーテルアブレーションの適応と可能性─進化するテクノロジーとその活用