カレントテラピー 34-2 サンプル

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Current Therapy 2016 Vol.34 No.2 73代替療法177虚血心といった器質的心疾患を合併している.アブレーションによって洞調律が維持できれば,塞栓症のみならず心不全など将来的な心血管イベント発生を抑制することが可能であり,大きなベネフィットが得られる.一方,器質的心疾患を認めない持続性AFはどうだろうか.このような症例では永続性AFとなっても心機能低下や心不全をきたさない可能性が高い.また,心原性脳梗塞発症リスク(CHADS2スコア,CHA2 DS2 VAScスコア)も低いと予想される.しかし若年者の場合,現時点では抗凝固療法が不要でも,65歳以上あるいは75歳以上になった場合に抗凝固療法が必要になる.したがって若年者で将来的な抗凝固療法を避けたい場合,あるいは患者自身が将来的な抗凝固療法を望まない場合もアブレーションの適応になるであろう.Ⅳ 薬物によるレートコントロールの新展開積極的なアブレーション治療に比し,薬物によるレートコントロールは安全に行える保存的治療法である.β遮断薬,Ca拮抗薬,ジギタリスが使用されるが,最近はβ遮断薬が用いられることが多い.適切な心拍数に関しては,RACEⅡの結果を受け8),日本循環器学会のガイドラインにも9),「緩やかな目標心拍数(安静時心拍数110/分未満)で開始し,自覚症状や心機能の改善がみられない場合はより厳密な目標(安静時心拍数80 /分未満,中等度運動時心拍数110/分未満)とする」と明記されている.最近,心不全を合併したAFのレートコントロールについて新しい知見が報告されたので紹介する10),11).まず個々の患者のデータを用いたメタ解析で,洞調律の患者ではβ遮断薬が生命予後を改善させたのに対し,AF患者では改善しなかったと報告された10).一方,ごく最近,スウェーデンの心不全登録研究から,11,466人の洞調律患者および7,392人のAF患者の心拍数別の生命予後,ならびにβ遮断薬の有効性が報告された.図5に示すように,洞調律患者では心拍数が60/分以下の群に比し,心拍数が10/分上昇するごとに有意に生命予後が悪化し,特に心拍数が100/分を超える群では生命予後が悪かった.AF患者では,このような生命予後の悪化は,心拍数が100/分を超える群のみでしか認められなかった.一方,β遮断薬は洞調律であってもAFであっても死亡率を低下させた.これらの論文10),11)の解釈は容易ではないが,筆者は,心不全の有無にかかわらず慢性AFのレートコントロールは80~90 /分を目安とし,100 /分を超えないようにすること,そして第一選択はβ遮断薬(ビソプロロールまたはカルベジロール)で少量から開始し,Ca拮抗薬やジギタリスの併用は避けるべきと考えている.Ⅴ おわりにAF,特に持続性患者を前にしたとき,洞調律維持<0.001 <0.051 10ハザード比A Bハザード比0.1 100.7320.1410.3140.1750.0011.02(0.90~1.16)1.09(0.97~1.23)1.07(0.94~1.21)1.11(0.96~1.28)1.30(1.11~1.52)<0.001<0.001<0.001<0.001<0.0011.26(1.15~1.39)1.37(1.24~1.51)1.52(1.36~1.70)1.63(1.40~1.88)2.69(2.26~3.21)多変量補正心拍数 60/分(コントロール)61~70/分71~80/分81~90/分91~100/分>100/分図5 心不全合併AF患者において心拍数が生命予後に及ぼす影響A:洞調律患者.心拍数が10/分上昇するごとに有意に生命予後が悪化した.B:AF患者.生命予後の悪化は,心拍数が100/分を超える群のみでしか認められなかった.〔参考文献11)より引用改変〕