カレントテラピー 34-2 サンプル

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Current Therapy 2016 Vol.34 No.2 69173Ⅰ “AFFIRM時代”のリズムコントロールとレートコントロールAFFIRM 1),RACE 2),そしてわが国で行われたJ -RHYTHM試験3)で,「レートコントロールはリズムコントロールに遜色のない安全な治療法」であることが証明された.カナダのCARAFレジストリー研究4)によると,2000年を境にリズムコントロールよりレートコントロールが選択される頻度が明らかに高くなっている(図1).これはまだ心房細動(atrialfibrillation:AF)アブレーションが普及していなかった時代である.大規模臨床研究の結果を受けての医師の当然の対応といえる.生体にとって洞調律であることが望ましいことは明らかであるのに,なぜリズムコントロールが優越性を示せなかったのであろうか.その主要な原因に抗不整脈薬の副作用が挙げられる.AFFIRMのサブ解析において,“抗不整脈薬の投与”は,心血管死および心血管疾患による入院を増加させる因子であった5).すなわちアミオダロン,ソタロール,フレカイニドを中心としたⅠc群は,いずれも心血管疾患による入院および死亡を増加させた(図2)5).AFFIRMやRACEでは,抗不整脈薬の催不整脈作用および陰性変力作用による悪影響が,洞調律維持による好影響を相殺してしまったためにリズムコントロールの優越性が示されなかったと推測される.Ⅱ アブレーションによるリズムコントロール肺静脈隔離によるAFアブレーションが普及してくると,アブレーションの優れた洞調律維持効果が多く報告されるようになった.最近,肺静脈隔離の有効性を,薬物によるレートコントロールおよび房室*1 大分大学医学部循環器内科・臨床検査診断学講座教授*2 大分大学医学部循環器内科・臨床検査診断学講座助教カテーテルアブレーションの適応と可能性─進化するテクノロジーとその活用心房細動レート治療の適応とアブレーション治療の棲み分け髙橋尚彦*1・篠原徹二*2AFFIRM,RACE,J-RHYTHMなどの大規模臨床研究から,「レートコントロールはリズムコントロールに遜色ない安全な治療法」という考え方の正当性が導かれた.しかし,これらの臨床研究で洞調律維持の手段として用いられたのは抗不整脈薬である.テクノロジーの進歩もあって,アブレーションによる洞調律維持効果は抗不整脈薬より明らかに高い.また薬剤服用に伴う副作用もない.したがって,従来の「抗不整脈薬が無効になった場合はレートコントロールで」という展開から,「アブレーションでも洞調律維持が困難な場合にはレートコントロールで」という展開になる場合が増えている.個々の患者を前にしたとき,まず洞調律維持でどのようなベネフィットが得られるかを熟考する.そしてアブレーションでどの程度洞調律維持が望めるかを見極めたうえで,患者の症状,病態,年齢,希望等と併せ総合的に治療方針を決定すべきである.