カレントテラピー 34-2 サンプル

カレントテラピー 34-2 サンプル page 10/28

電子ブックを開く

このページは カレントテラピー 34-2 サンプル の電子ブックに掲載されている10ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
カレントテラピー 34-2 サンプル

Current Therapy 2016 Vol.34 No.2 49153Ⅰ はじめに器質的心疾患に伴う心室頻拍(ventricular tachycardia:VT)に対する心カテーテルアブレーション治療は,3Dマッピングシステムの登場によって大きく進歩した.このシステムで洞調律下にサブストレイトマップを作成し,心室内の解剖学的障壁を明らかにすることで頻拍回路を推定,通電による頻拍回路途絶をもってVTの治療が可能となった1).例えば,陳旧性心筋梗塞に代表される心筋虚血に伴うVTでは線維化した瘢痕組織が解剖学的障壁となり得るが,これをサブストレイトマップにより可視化し治療の手がかりとするというものである.この方法によりアブレーションの治療成績は飛躍的に向上した2),3).その後,治療対象となる疾患は虚血性心疾患のみならず,心筋症や心筋炎などをはじめとする非虚血性心疾患にも拡大され,最近のアブレーション治療成績は,従来の薬物療法と比較しても有意にVTの再発を抑制していることが報告されている4).それと同時に,電気生理学的検査およびカテーテルアブレーションによって電気生理学の進歩にも大きく貢献することとなった.本稿では,器質的心疾患合併VTに対するカテーテルアブレーション治療の原理,さまざまなストラテジー,そして治療成績に関して当院での経験を交えながら概説する.Ⅱ VTのメカニズム虚血性心疾患,とりわけ陳旧性心筋梗塞症例では約3%にVTが生じ得る.虚血性心疾患に合併するVTは,心筋虚血により線維化した瘢痕組織と傷害心* 筑波大学医学医療系循環器内科不整脈次世代寄附研究部門准教授カテーテルアブレーションの適応と可能性─進化するテクノロジーとその活用器質的心疾患合併心室頻拍のアブレーション戦略と成績関口幸夫*器質的心疾患に伴う心室頻拍(ventricular tachycardia:VT)に対するアブレーション治療は,3Dマッピングシステムの登場により大きく進歩した.頻拍中にこのシステムを用いることで回路の同定が可能となること,また頻拍が誘発不能もしくは頻拍により血行動態が破綻する場合には洞調律下にサブストレイトマップ(substrate map)を作成し,心室内の解剖学的障壁を明らかにすることで頻拍回路を推定,通電による頻拍回路途絶をもってVTの治療が可能となった.虚血性心疾患に伴うVTは,頻拍回路が心内膜側に存在することが多くアブレーション成功率が比較的高いのに比べ,拡張型心筋症や不整脈原性右室心筋症をはじめとする非虚血性心疾患由来のVTは頻拍回路が心外膜側に位置することも珍しくないこと,また原疾患の進行により新たにVTが出現することもあり,アブレーションによる長期VTイベント非再発率はやや低下する.