カレントテラピー 34-12 サンプル page 8/36
このページは カレントテラピー 34-12 サンプル の電子ブックに掲載されている8ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。
概要:
カレントテラピー 34-12 サンプル
Current Therapy 2016 Vol.34 No.12 11過活動膀胱の診断と治療1145き起こすと報告されている25).3)膀胱の加齢加齢に伴い,膀胱平滑筋を支配する骨盤神経節後神経からのアセチルコリンは減少し,アデノシン三リン酸(ATP)放出が増加する.ATPは収縮の開始に関与するので,尿意切迫感などのOABの原因になっている可能性もある.また,加齢とともに膀胱上皮は酸化ストレスを受けやすく,上皮由来のアセチルコリンも減少しATP放出が増加,上皮のプリン受容体(P 2X3)増加,平滑筋の反応性の亢進などにより,膀胱からの求心性入力も増加するとされている26).4)膀胱の炎症OAB患者の約60%に膀胱上皮あるいは上皮下に慢性の炎症が存在し27),また前立腺肥大症に対する薬物療法後も尿意切迫感の残存する患者,あるいは女性のOAB患者では血清C反応性蛋白(C-reactive protein:CRP)が高値であると報告されている28).膀胱の炎症はOABの発生に関与している可能性がある.2 女性における発症メカニズム女性特有のOABの発症メカニズムとして,主に女性ホルモン,骨盤底弛緩・骨盤臓器脱(pelvic organprolapse:POP)の2点が挙げられる.1)女性ホルモン更年期に伴うエストロゲンの低下は,泌尿生殖器の萎縮性変化を引き起こし,頻尿,尿意切迫感,夜間頻尿,切迫性尿失禁などの下部尿路症状や再発性尿路感染症の要因となる.エストロゲンの尿路系に及ぼす作用は,尿道内圧の増加,膀胱の知覚閾値の増加,尿道平滑筋のα交感神経受容体の感受性の増加などの蓄尿機能へ作用し,エストロゲンの減少は蓄尿機能の低下を起こすとされる.月経周期によるエストロゲンとプロゲステロンレベルの変化も,生殖器同様に下部尿路にも影響を及ぼし,黄体期に排尿筋活動の異常や下部尿路症状が悪化するという29).腹圧性尿失禁については,外因性エストロゲンは,コラーゲンの再構築へ影響を与え,総コラーゲン量の減少,クロスリンクの減少,コラーゲン代謝亢進を導き,量的・質的にもコラーゲンは低下し,膀胱頸部のサポートの弱体化を招き,腹圧性尿失禁を起こすという30).2)骨盤臓器脱スウェーデンの地域住民を対象とした疫学調査では,OABを有する頻度は,POPの有無により,ある場合22.5%(102/454),ない場合が3.9%(196/5,035)と報告されている31).このように,POP患者がOABを有する頻度は,POPを有さない患者よりも高いといわれている.POPがOABを起こす原因は,POPによる膀胱出口部閉塞とされる.一般的にPOP患者の最大尿流量はPOPを有さない患者よりも低く,さらに排尿筋過活動を認める患者では尿流量が最も低いという報告があり,閉塞と排尿筋過活動は関連があるとされる32).また,膀胱瘤では脱出により膀胱頸部が開き,尿が尿道内に入って排尿筋収縮が誘発されるという説もある33).3 男性における発症メカニズム1)膀胱出口部閉塞膀胱出口部閉塞があると二次的に膀胱機能の変化が誘発され,それに伴いOABも生じると推定されている.前立腺肥大症では蓄尿・排尿のサイクルごとに膀胱伸展・高圧・虚血・再灌流が繰り返され,徐々に上皮・神経・平滑筋にさまざまな変化がもたらされる.特に膀胱血流障害は酸化ストレスを引き起こし,ラジカルが上皮・神経・平滑筋の障害をもたらす34).(1)神経の変化膀胱壁内神経(骨盤神経節後線維)は虚血に対し特に脆弱で,部分除神経(partial denervation)の状態となる.除神経に伴って膀胱平滑筋はアセチルコリンに対し過大な反応を起こすようになる.また,虚血に伴い知覚神経にはニューロキニン受容体の増加などが生じ,知覚の亢進を引き起こすと考えられる.(2)膀胱平滑筋の変化膀胱は自律収縮能を有し,蓄尿期での自律収縮は求心性神経伝達促進に関与している.自律収縮の本体は平滑筋細胞が有する自動能であるが,正常では隣接する平滑筋細胞が電気的にカップリングしているのみである.しかし,OAB患者では蓄尿期の膀胱壁の微細な動き(micromotion)が尿意切迫感と関連していることが報告され35),また,膀胱出口部閉塞では平滑筋細胞間gap junctionの構成蛋白であるconnexin43の発現亢進が認められ,多くの平滑筋細胞が同期