カレントテラピー 34-12 サンプル page 5/36
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カレントテラピー 34-12 サンプル
8 Current Therapy 2016 Vol.34 No.121142Ⅰ 過活動膀胱の定義過活動膀胱(overactive bladder:OAB)とは,尿意切迫感を必須とした症状症候群であり,通常は頻尿と夜間頻尿を伴い,切迫性尿失禁は必須ではない1)~3).また,その診断のためには局所的な病態を除外する必要がある1)~3).したがって,OABの症状は4つの要素(尿意切迫感,頻尿,夜間頻尿および切迫性尿失禁)から構成されることが多い.OABと鑑別すべき疾患には,悪性腫瘍(膀胱癌,前立腺癌,その他の骨盤内悪性腫瘍),尿路結石(膀胱結石,尿道結石,下部尿管結石),下部尿路の炎症性疾患(細菌性膀胱炎・尿道炎・前立腺炎,間質性膀胱炎),子宮内膜症などの膀胱周囲の異常,多尿,心因性頻尿,薬剤の副作用などがあり,多彩である1)~3).Ⅱ 過活動膀胱の分類OAB症状ならびに排尿筋過活動の病態は,明らかに神経疾患に起因すると考えられる神経因性とそれ以外の非神経因性の2つの機序に大別される.表1に神経因性OABをきたす主な疾患を挙げた3).本項では過活動膀胱診療ガイドライン第1版4)と第2版3)を参考に,発生メカニズムを概説する.Ⅲ 神経因性過活動膀胱(表)OAB症状もさまざまな神経疾患で生じることが知られているが,基本的には「尿意切迫感」という尿意を感ずることのできる疾患に限られ,尿意のない完全脊髄損傷は含まれない.* 福井大学学術研究院医学系部門医学領域器官制御医学講座泌尿器科学分野教授過活動膀胱の最新の治療─QOL改善に広がる選択肢過活動膀胱とは─定義と発症のメカニズム─横山 修*過活動膀胱(overactive bladder:OAB)とは,尿意切迫感を必須とした症状症候群であり,通常は頻尿と夜間頻尿を伴い,切迫性尿失禁は必須ではない,と定義されている.原因として神経因性と非神経因性の種々の病態が想定されているが,発生メカニズムに関して,これまで特発性とされていた1群の病態生理が明らかになったことが最近のトピックスとして特筆される.すなわち肥満・高血圧・脂質異常・耐糖能異常などの構成因子に関連する血管内皮機能障害,内臓脂肪由来炎症性サイトカインの増加,自律神経系の活動亢進が直接,あるいは間接的にその発生にかかわっていることが解明され,それが治療に結び付いてきていることである.神経因性OABについても,近年の機能的脳画像解析法の進歩によってそのメカニズムが明らかとなってきている.