カレントテラピー 34-12 サンプル

カレントテラピー 34-12 サンプル page 23/36

電子ブックを開く

このページは カレントテラピー 34-12 サンプル の電子ブックに掲載されている23ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
カレントテラピー 34-12 サンプル

Current Therapy 2016 Vol.34 No.12 691203Ⅱ β3作動薬:ミラベグロンミラベグロンは本邦で開発された世界初の選択的β3作動薬である.人間の膀胱平滑筋は,β受容体を介して弛緩するが,同受容体の97%がβ3であることが報告されている.β3受容体を刺激することで,細胞内のcyclic AMPが増加し,さらにK+チャネルの開放が惹起され平滑筋が弛緩するといわれている.最近,尿意切迫感の要因として,①尿路上皮由来のアデノシン三リン酸(ATP)やアセチルコリンなどがC線維神経活動を刺激する,②平滑筋のマイクロモーションが求心性神経(Aδ/C線維の両方)を刺激することが報告されている.β3 作動薬は,尿路上皮のβ3受容体を介して一酸化窒素(NO)を放出させ,C線維神経活動を抑制する可能性ならびに,同薬剤による平滑筋の緊張緩和がマイクロモーションの活動を抑制することにより,尿意切迫感を抑制すると考えられる(図2).当初は,閉経後の女性OABに対する投与が推奨されていたが,現実的には男性患者にも広く使用されている.男性に対するミラベグロンの前向きの検討であるが,Nittiらは内圧尿流検査(pressure flowstudy:PFS)に基づいて,①45歳以上,②3カ月以上の下部尿路症状,③下部尿路閉塞(bladder outlet obstruction:BOO)Index>20,④最大尿流率(Qmax)<12 mL/ 秒の患者200名を,50 mg 群,100 mg 群,プラセボ群に1:1:1で割り付けして,12週間投与を行った.50mg,100mgの両群ともに,プラセボ群と比較して,QmaxおよびQmax時の膀胱収縮圧には有意差がなく,また国際前立腺症状スコア(IPSS)の排尿症状に与える影響にも有意差はなく,本薬剤が,主観的にも客観的にも排尿所見には影響を与えないことを報告した.副作用にも有意差はなかった.一方,IPSSの蓄尿症状,排尿回数,尿意切迫回数は,プラセボ群に比較して有意に減少させた11).これは,ラットの基礎的実験で得られた所見が,人間でも証明された結果といえる.本邦でも,松川らが50mg 投与で,初期尿意,最大尿意時の膀胱容量を増加させ,不随収縮を減少させる一方,Qmax時の膀胱収縮圧には影響を与えないことを報告した.Otsukiらは,α遮断薬をすでに内服しているOAB症状を有する前立腺肥大症(benign prostatic hyperplasia:BPH)患者で,抗コリン剤が有効でない場合にも,ミラベグロンが60%で有効であることを報告した12).ミラベグロンに関する単剤,併用療法に関する各論文でも,約6つの慢性疾患領域の治療薬を12カ月以上にわたり処方されている167,907例の患者を対象に,データベースから抽出された処方データをレトロスペクティブに解析し,各疾患領域別に患者の服薬継続率を検討した.なお,処方期間経過後,60日以上の未治療期間があった場合,服薬中止とみなした.406080240 480 720100(%)0200 120 360 600服薬継続率投与期間(日)経口糖尿病薬アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(ARB)スタチンビスホスホネートプロスタグランジンアナログOAB治療薬(主に抗コリン剤)試験方法180日時点の服薬継続率経口糖尿病薬 66%,ARB 63%,スタチン 56%ビスホスホネート 56%,プロスタグランジンアナログ 47%OAB治療薬 28%図16つの慢性疾患領域における服薬中止までの期間〔参考文献2)より引用改変〕