カレントテラピー 34-12 サンプル page 20/36
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カレントテラピー 34-12 サンプル
38 Current Therapy 2016 Vol.34 No.121172される自身の筋電図波形を視覚的に確認しながら骨盤底筋群を収縮させることにより,収縮方法を学習することができる(図2).OABに対するバイオフィードバック療法は,『過活動膀胱診療ガイドライン』において推奨グレードBとして紹介されている1).3 生活指導OABに対する生活指導としては,体重減少,運動療法,禁煙,食事・アルコール・飲水指導,便秘の治療などが挙げられるが,このうち『過活動膀胱診療ガイドライン』において推奨グレードAとして紹介されているのは体重減少のみであり,運動療法,禁煙,食事・アルコール・飲水指導,便秘の治療は推奨グレードC1として紹介されている1).肥満であることはOABや腹圧性尿失禁のリスクファクターであると報告されている7).肥満女性に食事療法による減量プログラムを行った群は,対照群と比較して有意に腹圧性尿失禁および切迫性尿失禁が減少したことが報告されている8).4 行動療法統合プログラム医療従事者による行動療法統合プログラムは,膀胱トレーニングと骨盤底筋トレーニング,生活指導などを組み合わせた包括的な行動療法プログラムを指す.臨床においては,個々の行動療法を単独で行うことは少なく,こうした包括的な行動療法を行うことが多い.無治療と行動療法統合プログラムの比較では,高齢女性の頻尿および尿失禁の予防に有効であったとの報告がある9).また,α1遮断薬使用後の出口部閉塞がない男性OAB患者において行動療法統合プログラムと抗コリン薬による薬物療法との治療効果を比較したところ,行動療法統合プログラムは薬物療法と同等の治療効果を有したことが報告されている(MOTIVE試験)10).女性OAB患者を対象とした検討においては,行動療法統合プログラムは抗コリン薬による薬物療法よりも有効性が持続したことが報告されている11).さらに,骨盤底筋トレーニング単独,膀胱トレーニング単独,行動療法統合プログラム,抗コリン薬による薬物療法を1年間フォローアップして比較した検討では,すべての群で切迫性尿失禁,生活の質(QOL),1日のパッド数に有意な改善が認められ,行動療法統合プログラム群において有効性が高かったと報告されている12).5 OABに機能性尿失禁を併発している場合の対応策OABは加齢とともに増え,脳血管障害やパーキンソン病などとも関連する.こういった疾患に罹患した場合には,日常生活動作(ADL)の低下によってますますトイレに間に合いにくくなり,OABに機能性尿失禁を併発している場合も多々ある.このような場合には,前述の行動療法に加え,運動機能を向上させるためのリハビリテーションや,環境調整などが必要となる13).運動機能を向上させるためのリハビリテーションとして,トイレまでの移動をスムーズに行うための起居動作の練習,歩行練習,トイレへの移乗動作の練習などを行う.個々の患者の運動機能に応じてポータブルトイレや手すり,尿器などの福祉用具を利用することも併せて検討するとよい.病室,ベッド,ポータブルトイレの位置の変更などにより移動距離を短くするだけでなく,個々の患者の運動機能にあわせて適切な位置,適切な方向に手すりやポータブルトイレを配置する,といった環境調整も必要である.手指の巧緻運動が障害されている場合などには,下衣の着脱がスムーズに行えるように下衣のチャックにリングを付けるなど,個々に応じた工夫をする.また,同じ時間帯に失禁が認められる場合や,認知症などのために尿意をうまく伝えられないケースの場合には,介護者や医療従事者が排尿の機会をつくり,排尿を促す方法もある.このような方法は排尿促進法(prompted voiding)と呼ばれて図2 バイオフィードバック療法