カレントテラピー 34-12 サンプル page 19/36
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カレントテラピー 34-12 サンプル
Current Therapy 2016 Vol.34 No.12 37治 療1171食事に含まれる水分量なども加味したうえで,個々に応じた適切な水分摂取量をアドバイスできるとよい.また,コーヒーや紅茶などのカフェイン類,炭酸飲料などを過剰に摂取しているために尿意切迫感が増悪している場合もある.カフェイン類や炭酸飲料を控えることで尿意切迫感が改善されるか否か,排尿日誌を用いてチェックし,改善がみられるようなら時と場合に応じてこれらの摂取量を調節してみては,とアドバイスするようにしている.2 理学療法1)骨盤底筋トレーニングOABに対する理学療法の主なものとして,骨盤底筋トレーニングがある.OABの原因は多岐にわたっているが,そのうちのひとつとして骨盤底の脆弱化が挙げられる.骨盤底筋群を収縮させることにより排尿筋の収縮を抑制できるとされているため,骨盤底筋群の筋力強化とともに,尿意切迫感を感じたときにタイミングよく骨盤底筋群を使えるようになることでOABの症状改善を図る.骨盤底筋トレーニングは腹圧性尿失禁の治療の第一選択肢であるとともに,OAB,切迫性尿失禁,混合性尿失禁にも有効であるとされている3).OABに対する骨盤底筋トレーニングは『過活動膀胱診療ガイドライン』において推奨グレードAとして紹介されている1).骨盤底筋トレーニングを行っていくうえで重要となるのが骨盤底筋群の正しい収縮方法の習得である.まず,患者に骨盤底筋群の位置や機能を正しく理解させる必要がある.患者の多くは骨盤底筋群の位置をイメージすることが難しく,下腹部や臀部に力を入れてしまう場合がある.したがって,患者が理解しやすいようにイラストや骨盤底の模型などを活用するのに加え,恥骨や尾骨,坐骨を患者自身にも触ってもらい,患者自身の身体における骨盤底筋群の位置を具体的にイメージさせることは重要である.骨盤底筋群の位置を確認したうえで,骨盤底筋群の構造と機能,骨盤底筋トレーニングにより筋力増強を促すことでOABや尿失禁の症状を改善させることができることを説明する.次に,随意的な収縮の指導を行う.口頭で指導する際には,収縮方法をイメージしやすくするために「おならやお小水を我慢するときのように」,「便を肛門で切るように」,「腟を身体の中に引っ張り込むように」など,具体的な表現を用いるようにしている.この後,触診により骨盤底筋群の収縮が正しく行えているか確認する.自宅でのトレーニングプログラムについては,typeⅠ線維,typeⅡ線維の両方の強化が図れるよう,持続的な収縮と瞬発的な収縮とを組み合わせたプログラムとする.患者の骨盤底機能も加味したうえで,患者が実施可能なプログラムを提案するのが理想的であり,1日のうちで数回に分けたプログラムとする.トレーニングを実施する際の肢位については,背臥位,背臥位で臀部を挙上させたブリッジの姿勢,側臥位,四つ這いの姿勢,座位,立位など,さまざまな肢位で行うようにする.特にOABの患者に対して骨盤底筋トレーニングの指導を行う際には,単に筋力強化を図るだけでなく,尿意切迫感を感じたときにタイミングよく骨盤底筋群を使い尿意をコントロールすることを習得していくことがポイントとなる.また,なかには骨盤底筋群の弛緩が不十分となり,筋緊張が異常に高くなっているケースもある.そういった場合には骨盤底筋群の筋力強化ではなく,腹式呼吸なども行い,骨盤底筋群を弛緩させる練習を行う場合もある.2)バイオフィードバック療法患者のなかには,骨盤底筋群の筋力低下が生じることで収縮感覚が低下しており,経腟触診や体表面からの触診を実施されても収縮感覚が得られにくい場合がある.そのような場合に有用であるのが,バイオフィードバック療法である.バイオフィードバック療法では腟内圧計や筋電図などを用いることにより,骨盤底筋群の収縮を触覚,視覚,あるいは聴覚を利用して確認しながら骨盤底筋トレーニングを行う.腟内圧計を用いたバイオフィードバック療法では,腟内に筒状の圧センサーを挿入し,表示された腟内圧が目標値に達するよう,視覚的に確認しながら骨盤底筋群を収縮させる.筋電図を用いたバイオフィードバック療法では,電極がついたプローブを腟内に挿入することにより骨盤底筋群の筋電図波形を導出する.パソコンのモニター上にはあらかじめガイド波形が表示されており,患者はリアルタイムに表示