カレントテラピー 34-12 サンプル

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Current Therapy 2016 Vol.34 No.12 351169Ⅰ はじめに過活動膀胱(overactive bladder:OAB)に対する行動療法には,膀胱トレーニング,骨盤底筋トレーニングを主とした理学療法,生活指導,これらの行動療法の統合プログラムなどがあり,『過活動膀胱診療ガイドライン』においてこれらの推奨グレードはA(強い根拠があり,行うよう強く勧められる)~C1(根拠はないが,行うよう勧められる)と紹介されている(表)1).本稿では,OABに対するこれらの行動療法について概説する.Ⅱ 過活動膀胱に対する行動療法1 膀胱トレーニングOABによる尿意切迫感を訴える患者の多くは,尿失禁を防ぐために早め早めにトイレに行く習慣が身に付いている場合があり,膀胱トレーニングを指導する必要がある.膀胱トレーニングとは,徐々に排尿間隔を伸ばしていくことで膀胱容量を増やし,蓄尿症状を改善させる方法である.OABに対する膀胱トレーニングは『過活動膀胱診療ガイドライン』において推奨グレードAとして紹介されている1).尿意を我慢するときには,①立ち止まり,可能なら座る,②深呼吸をして全身をリラックスさせる,③骨盤底筋群の収縮と弛緩を繰り返す,④足をクロスする,椅子の縁に押し当てて尿道を圧迫する,しゃがんで踵で外陰部を圧迫する(holding posuture)2),な*1 名古屋大学大学院医学系研究科リハビリテーション療法学専攻理学療法学講座助教*2 名古屋第一赤十字病院女性泌尿器科部長過活動膀胱の最新の治療─QOL改善に広がる選択肢行動療法井上倫恵*1・加藤久美子*2過活動膀胱(overactive bladder:OAB)に対する行動療法には,膀胱トレーニング,骨盤底筋トレーニングを主とした理学療法,生活指導,これらの行動療法の統合プログラムなどがあり,治療効果が報告されている.膀胱トレーニングとは,徐々に排尿間隔を伸ばしていくことで膀胱容量を増やし,蓄尿症状を改善させる方法である.骨盤底筋群を収縮させることにより排尿筋の収縮を抑制できるとされているため,骨盤底筋トレーニングはOAB,切迫性尿失禁,混合性尿失禁にも有効であるとされている.生活指導のなかでは特に体重減少が有効である.こういった行動療法は単独で実施されることは少なくしばしば包括的に行われ,単独で実施されるよりも治療効果が高いと報告されている.今後は多職種が連携し,薬物療法だけでなく種々の行動療法も併せて行っていくことができるようなシステムの構築が望まれる.