カレントテラピー 34-12 サンプル

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カレントテラピー 34-12 サンプル

22 Current Therapy 2016 Vol.34 No.121156染症(膀胱炎・尿道炎・前立腺炎),間質性膀胱炎,放射線性膀胱炎,神経因性膀胱,腹圧性尿失禁,骨盤臓器脱,前立腺癌,膀胱腫瘍,膀胱結石,下部尿管結石,尿道結石などは,原疾患の治療を行うことによりOAB症状が改善することが期待される.4 患者教育,治療目標の設定,QOLの評価専門医により再評価され,OABと診断された場合,正常な下部尿路機能,各種治療法の特徴の説明などの患者教育は重要である.また治療目標の設定を,患者ごとに行うべきである.さらに,これまで行われてきた治療の評価およびQOLの評価を行う必要がある.これらを継続的に行うことにより,少しでも患者満足度を高めることに努める.5 治療1)行動療法一般医家を対象としたアルゴリズムと同様である.行動療法と薬物療法の併用は,単独と比較して有効性を示す可能性がある(推奨グレードB).2)薬物療法(1)女性および前立腺肥大症のない男性初期診療で薬物療法が無効であった場合,薬剤の変更や追加は有効な手段となる場合がある.例えば,抗コリン薬の種類を変更(推奨グレードC1),抗コリン薬からβ3作動薬へ変更(推奨グレードB・C1),β3作動薬から抗コリン薬へ変更(推奨グレード保留)の有用性が報告されている.抗コリン薬とβ3作動薬の併用の有効性に関しては,海外での臨床試験では確認されたが,国内臨床試験では安全性のデータおよび追加併用前と比較した有効性のデータがある(推奨グレードB).なお,前立腺肥大症のない男性においては,抗コリン薬単独(推奨グレードB),β3作動薬単独(推奨グレードC1)という選択肢はあり得る.(2)前立腺肥大症のある男性前立腺肥大症に合併する男性のOABに対しては,α1遮断薬もしくはPDE5阻害薬を中心とした薬物治療が推奨される.初期治療としてα1遮断薬をまず投与し,OAB症状が残存する場合は,抗コリン薬もしくはβ3作動薬を追加投与するのが望ましい.前立腺体積が大きいものに対しては,即効性はないものの5α還元酵素阻害薬を併用することによりOAB症状の改善が期待できる.なお,α1遮断薬,5α還元酵素阻害薬,PDE5阻害薬は,OABに対して保険適用とはなっていない.3)前立腺肥大症に対する外科的治療前立腺腫大による膀胱出口部閉塞があって排尿筋収縮力が良好であれば,前立腺肥大症に対する手術により,OAB症状の改善もある程度期待できる.6 難治性OABに対する治療本ガイドラインでは難治性OABを,「一次治療である行動療法および各種抗コリン薬(経口薬,貼付薬)やβ3作動薬を含む薬物療法を単独ないしは併用療法として,少なくとも12週間の継続治療を行っても抵抗性である場合」と定義している.難治性OABの治療は,専門医にとっても容易ではない.治療成功の定義は現時点では未定である.難治性OABの場合,OAB以外の背景の病態の可能性を除外するためには,原点に立ち戻って再評価をすることが重要である.また,OAB症状を引き起こす特発性OAB以外の特定の疾患(悪性腫瘍,尿路結石,下部尿路の炎症性疾患,子宮内膜症などの膀胱周囲の異常,多尿,心因性頻尿,薬剤の副作用など)を正確に診断する.副作用の有無と程度の再確認,経口薬と行動療法の併用の再指導と患者教育,貼付剤への変更など投与方法の変更,抗コリン薬以外の薬剤への変更などを試み,いくつかのオプションも無効であった場合は,より侵襲的な治療法(神経変調療法,ボツリヌス毒素,最も重症な場合には外科的治療法)を考慮しなければならない1)神経変調療法(1)電気刺激療法非侵襲的であり,推奨グレードはBである.本邦では,干渉低周波療法のみが保険適用である.(2)磁気刺激療法電気刺激療法と機序は同一で,非侵襲的である.抗コリン薬抵抗性の女性OABに対して,本邦で大規模RCTにおける有効性,安全性が報告され,2014年に難治性女性OABに対して保険適用となった(推奨グレードB).