カレントテラピー 34-12 サンプル

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カレントテラピー 34-12 サンプル

20 Current Therapy 2016 Vol.34 No.1211543 問題がある病歴,症状,検査所見肉眼的血尿,高度排尿困難,尿閉の既往,再発性尿路感染症,骨盤部の手術・放射線治療の既往,神経疾患の合併または後遺症,腹圧性尿失禁,骨盤臓器脱,膀胱痛,前立腺癌の疑い(PSA高値など),超音波検査での異常(膀胱内に結石,腫瘍などの病変を疑わせる所見を認める)などを認める場合は,専門医へ相談することが望ましい.4 検尿上述したように,OABと鑑別すべき疾患には,悪性腫瘍,尿路結石,下部尿路の炎症性疾患などがある.これらを鑑別するために,検尿は基本評価として必須の検査である.血尿や膿尿がある場合は,原則として他疾患の可能性があることから,専門医に相談することが望ましい.1)血尿がある場合検尿で血尿のみを認める場合は,膀胱癌・腎盂尿管癌などの尿路悪性腫瘍(尿路上皮癌)を疑い検査をする必要がある.したがって,肉眼的血尿,顕微鏡的血尿,尿潜血陽性の場合は専門医へ相談することが望ましい.特に尿路上皮癌のリスク因子である,40歳以上の男性,喫煙,有害物質への曝露,泌尿器科疾患の既往,蓄尿症状,尿路感染,フェナセチンなどの鎮痛薬多用,骨盤放射線照射既往,シクロホスファミドの治療歴などを有する顕微鏡的血尿患者は,注意を要する.2)膿尿がある場合膿尿に血尿,排尿痛を伴う場合は,上述したように尿路結石と下部尿路の炎症性疾患を鑑別する必要がある.膀胱や前立腺の急性細菌性感染症の場合は,抗菌薬による治療を行う.改善が認められない,あるいは尿路感染症を反復する場合には,専門医へ相談することが望ましい.3)血尿も膿尿もない場合血尿も膿尿もない場合は,一応悪性腫瘍や炎症性疾患の可能性は否定してよい.ただし排尿障害を否定するために,膀胱内の残尿の有無は確認しておく必要がある.残尿は超音波検査経腹的測定法により容易に測定が可能である.残尿量が100mL以上の場合は,専門医への相談が必要である.5 治療残尿量が100mL未満の場合は,下記の行動療法と薬物療法を主体とした治療を行う.1)行動療法行動療法には,生活指導,膀胱訓練・計画療法,理学療法(骨盤底筋訓練,バイオフィードバック訓練),行動療法統合プログラム,その他の保存療法が含まれる.生活指導,膀胱訓練,骨盤底筋訓練,行動療法統合プログラムは推奨グレードA,バイオフィードバック訓練は推奨グレードBである.2)薬物療法(1)女性抗コリン薬もしくはβ3 作動薬の単独投与を行う.OABに腹圧性尿失禁を合併する混合性尿失禁に対しても,切迫性が主体であれば抗コリン薬あるいはβ3作動薬の投与は推奨される(推奨グレードA).OAB症状に加えて排尿症状がみられる場合は,抗コリン薬は低用量から始めるなど慎重に投与する.特に高齢女性(80歳以上)では,OABと排尿筋収縮障害が共存していることがあるので,抗コリン薬あるいはβ3作動薬投与により,排尿障害や尿閉が誘発される可能性がある.したがって,排尿症状が強い場合や残尿が多い場合(アルゴリズムでは100mL以上であるが,高齢者では安全性を考慮して50mL以上)は,専門医に紹介するほうがよい.(2)男性①50歳未満の男性のOAB比較的若年男性のOABでは,背景に神経疾患(神経変性疾患,脊柱管狭窄症など)や前立腺炎などを合併していることがあるので,一度,専門医に紹介することが推奨される.②高齢(50歳以上)の男性のOAB前立腺肥大症に合併するOABの可能性が高いので,排尿症状および前立腺肥大症の存在を確認したなら,前立腺肥大症に対する第一選択薬である,α1遮断薬あるいはPDE 5阻害薬(タダラフィル)の投与をまず行い,排尿症状(障害)の改善に努める.これらの薬剤のみでOAB症状も同時に改善することが期待できる.ただし,薬剤によりOAB症状の改善が得られないときには,抗コリン薬やβ3 作動薬など