カレントテラピー 34-11 サンプル

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68 Current Therapy 2016 Vol.34 No.111108培養による病原菌検査,寄生虫検査などである7).その他,原虫や便中ウイルスの検索も考慮すべきとされる.表に当科で施行しているドナースクリーニングの項目を示す.4 便の処理と投与方法ドナー便(新鮮便)は水道水,牛乳,生理食塩水などに懸濁して用いられるが,牛乳や生理食塩水のほうが細菌に対する影響は少ない7).便懸濁液はガーゼやコーヒーフィルターを通して大きな浮遊物を除去後,腸管に投与される.上部消化管(上部小腸)へは内視鏡,経鼻カテーテルなどを用いて,経肛門的には注腸や大腸内視鏡を用いて投与される.ただ,われわれの施設では,上部消化管からのアプローチは患者の許容性の問題があるので,大腸内視鏡による投与を用いている.便懸濁液を濾過遠心後ゼラチンカプセルに封入して内服する方法も報告されている.また,CD腸炎には凍結便の有用性も報告されている8).Ⅳ CD腸炎に対するFMTの効果FMTは免疫抑制状態を含めた若年から老年期の患者にまで施行され,手技的安全性,妊孕性と臨床効果が確認されている.最近のCammarotaらのレビューによると,重症例(中毒性巨大結腸症の合併など)を除いた500人を超える症例での有効率はほぼ90%に達する9).また,Drekonjaらの2つのプラセボ対照二重盲検試験と28のケーススタディをまとめたレビューによると,再発性と難治性CD腸炎に対するFMTの有効率はそれぞれ85%と55%であった10).さらに重要なのは,投与ルートにかかわらずほとんど副作用がないことである.2013年のvan Noodらの再発性CD腸炎を対象とした臨床試験の結果では,十二指腸チューブを用いたFMT(バンコマイシン2gの内服4日間に次いでFMT施行)の有効率が81%であったのに対して,標準的なバンコマイシン内服(1日2gを14日間)の有効率は31%にすぎなかった3).バンコマイシン投与群とFMT群の有効率の差があまりに大きかったことから,予定より早期に臨床試験も終了となった.CD腸炎に対しては内視鏡や注腸を用いた経肛門的なアプローチのほうが上部消化管からのアプローチに比べて効果が高いという報告もある.最近,ドナー便を遠心しグリセオールとともに凍結保存したカプセル剤内服の有効性も報告されており,今後,より簡便なFMTが可能になる可能性がある11).〈ドナーの選定〉60 歳未満 2親等以内の患者の親族〈ドナーのスクリーニング〉問診による除外高血圧症,糖尿病,高脂血症,アレルギー数週間前の抗生剤使用便秘(内服にてコントロールしているものは除外)下痢(2 日連続,1日3 回以上の軟便あるいは水様便 or 48時間で8 回以上の軟便)Homosexuality,刺青感染性疾患の除外血液検査HIV,HTLV- 1,梅毒,肝機能検査,A 型肝炎,B 型肝炎,C型肝炎,サイトメガロウイルス,EBウイルス, アメーバ糞便検査細菌(ヘリコバクターピロリ,エルシニア,キャンピロバクター,赤痢菌,サルモネラ,腸管病原性大腸菌)ウイルス(ロタウイルス,アデノウイルス,ノロウイルス)寄生虫スクリーニング虫卵スクリーニングCD toxin A/B表滋賀医科大学附属病院におけるドナースクリーニング