カレントテラピー 34-11 サンプル

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22 Current Therapy 2016 Vol.34 No.111062なっている12).これらの事実は,消化管におけるTh17細胞の分化誘導に腸内細菌が深くかかわっていることを示しており,SFBは少なくともそのひとつであるといえる.ヒトにおけるSFBに相当する細菌は現在のところまだ同定には至っていないが,Atarashiらは無菌マウスに対して健常人およびUC患者の糞便を定着させるとマウスの大腸組織にTh17が誘導されること,これらのマウスの腸内細菌叢のゲノム解析からTh17の誘導に相関がみられた20種の細菌を無菌マウスに定着させることでやはりTh17が大腸組織に誘導されることを明らかにしており,ヒトにおけるSFBに相当する細菌の存在が示唆されている13).また,Th17と並んでIL- 22の産生能をもつinnatelymphoid cell(ILC)3はCD患者において,IL- 23非依存的にマクロファージとの相互作用によってIL - 22を産生し,粘膜修復に関与している可能性が報告されている14).さらにIBDの病態を考えるうえでは,腸管上皮細胞やそれを覆う粘液層の果たす役割も欠かすことができない存在である.腸管上皮細胞は管腔と体内とを隔てているが,さらにその上皮と管腔の間には物理的なバリアとして粘液層が存在する.Okumuraらは,マウスの腸管に選択的に発現する蛋白であるLy6/PLAUR domain containing 8(Lypd8)に注目し,これが腸管上皮から管腔側へ分泌されることによって,鞭毛を有する細菌に結合し,こうした細菌が粘液層,そして腸管上皮内へと侵入するのを防御する役割を果たしていることを発見した15).この報告では,Lypd8を欠損したマウスではIBDの代表的な実験モデルのひとつであるデキストラン硫酸ナトa 健常者b IBD患者symbiosis dysbiosisIL-17A, IL-17FIL-21, IL-22食物繊維短鎖脂肪酸Clostridium cluster Ⅳ, ⅩⅣa↓酪酸↓抗菌ペプチド粘液層Tregの誘導Treg 樹状細胞マクロファージILC3レチノイン酸TGF-βIL-10IL-22Treg↓Th17↑樹状細胞マクロファージNK細胞IL-5, IL-6IL-13上皮バリア機能の低下IL-1, IL-6,IL-23, TGF-βTh1↑IL-12IFN-γIL-6, TNF-αTh17上皮バリア機能の維持抗菌ペプチドの産生形質細胞sIgA過剰な免疫応答の抑制Th2↑Treg誘導の低下IL-10↓IFN-γTNF-α図 IBD患者における腸管免疫の変化a:健常者では外来食餌抗原や共生する腸内細菌への免疫寛容として,Treg 細胞や抑制性マクロファージが抑制性サイトカインであるIL- 10を産生する.また,ILC 3やTh 17によって産生されるIL- 22は腸管上皮細胞に作用して抗菌ペプチドの産生や腸管バリア機能の維持に関与する.b:IBD患者ではdysbiosisにともない短鎖脂肪酸の産生低下やTreg細胞の分化増殖の低下が認められる.また腸管上皮バリア機能の低下にともない腸内細菌の粘膜内への侵入と,Toll様受容体を介したマクロファージなど自然免疫系の賦活化,さらにエフェクターT細胞の活性化による炎症性サイトカインの産生亢進が認められる.sIgA:secretory IgA,ILC:innate lymphoid cell