カレントテラピー 34-10 サンプル page 9/32
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カレントテラピー 34-10 サンプル
Current Therapy 2016 Vol.34 No.10 25ロコモティブシンドローム(ロコモ)の病態と対策961による問題点は胃腸障害を主とした有害事象であり,そのために少なくとも胃腸障害が存在する,もしくは生じた場合には,NSAIDsのなかでもCOX- 2阻害剤の使用が推奨されている.本邦で頻用されている外用NSAIDsやヒアルロン酸関節内注射,そして近年使用が広まってきたアセトアミノフェンについては,使用を勧めるという推奨度Bの治療法である.副腎皮質ステロイド剤と弱オピオイドや麻薬系鎮痛剤の推奨度は,実施を考慮してもよいという推奨度Cである.一方,グルコサミンやコンドロイチン硫酸を軟骨保護目的で使用することについては,推奨しないという推奨度Dであり,症状改善効果を有するか否かについては,エビデンスが不十分もしくは,複数のエビデンスから結論は導き出せないという推奨度Ⅰになっている.3 膝OAの外科的治療法のエビデンスレベル(図3)現在本邦において約9万件近い人工膝関節置換術が行われており,その原因疾患の多くを膝OAが占めていると予想できる.膝OAに伴う疼痛が強いために移動能力が著しく障害されても,人工膝関節置換術や高位脛骨骨切り術などの外科的治療法によって,歩行時の疼痛を取り除くことはできる.エビデンスの面からは,非薬物療法によっても十分な効果を得ることができない場合,人工膝関節置換術は,強くそれを勧めるという推奨度Aの外科的治療法である.高位脛骨骨切り術は,比較的年齢が若く,活動性が高いにもかかわらず症状が強い内側型膝OAの場合には,行うことを勧めるという推奨度Bとなっている.一方で,内側もしくは外側に限局した膝OAに対する人工膝関節単顆置換術は,実施を考慮してもよいという推奨度Cにとどまっている.しかし,人工膝関節単顆置換術については,近年エビデンスレベルの高い研究が行われ,適応と周術期の合併症を考慮に入れると,従来考えられてきたよりも優れた治療法であることが明らかとなってきた10),11).したがって,今後はこの術式についての推奨度は良い方向に変更されていく可能性がある.一方で,膝OAに対する関節洗浄術並びに関節鏡視下のデブリドマンも実施を考慮してもよいという推奨度Cとなっている.こちらについても,膝OAの病態把握にMRIが用いられるようになり,半月板損傷の有病率が高いことに対して鏡視下手術を行うことの効果について,近年エビデンスレベルの高い研究が行われた12).その結果,有効性は短期のみで,中期以降に手術の有意性は認められないことが明らかとなった.したがって,人工膝関節単顆置換術とは逆に,今後はこの術式についての推奨度はさらに厳しく見直される可能性がある.A B C D図3 変形性膝関節症に対する外科的治療法A:末期変形性膝関節症,B:高位脛骨骨切り術,C:人工膝関節単顆置換術,D:人工膝関節全置換術