カレントテラピー 34-10 サンプル

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22 Current Therapy 2016 Vol.34 No.10958び摩耗である.加齢に伴い発症する一般的な膝OAでは,主な構成要素であるⅡ型コラーゲン線維の変性と,衝撃の緩衝作用のための水分含有量の保持に重要なプロテオグリカンの変性が起こる.このOAの最も重要な病態である関節軟骨の質的異常については,原因解明に向けた基礎研究が進められているが,日常臨床に反映できるまでの解明には至っていない.変性した軟骨は,力学的負荷に対して脆弱になっており,何らかの理由でそれが摩耗し関節内に遊離することで,関節の裏打ち構造をする滑膜に炎症(滑膜炎)を惹起し,滑膜水腫や滑膜肥厚などを誘発する.また,軟骨の衝撃緩衝作用や軟骨下骨への力学的負荷の増大を招くことで,関節軟骨中心部の軟骨下骨の硬化と辺縁部の骨棘形成を惹起する.結果として関節全体の構造変化と機能障害を招く(図1).膝OAの誘因は,生物学的,生化学的,免疫学的そして力学的要素からなり,おそらくこれらが複合的に関与する.これらは,全身的要因と膝関節への局所的要因にも分類できる.全身的要因としては,年齢に加え女性であることや遺伝的素因などがある.関節軟骨への過剰な力学的負荷は膝関節への局所的要因となり,前十字靭帯損傷や半月板損傷などによる関節の安定性破綻によるものと,肥満などによる関節への慢性的な過剰な力学的負荷によるものがある.内反膝(O脚)も,膝OAの発症および増悪因子である.全身的要因としては,メタボリックシンドロームと膝OA発症との関連が,本邦で行われたコホート研究(東大ROAD study)から明らかとなっている.メタボリックシンドロームの危険因子(BMI,血圧,血清HDLコレステロール値,HbA1c)を2つもつ場合,3年後の膝OA発症のオッズ比は2.5であり,3つ以上もつ場合は8.4となる4).2 診断日常臨床における膝OAの診断は,単純X線を用いて行う.しかし,関節軟骨は単純X線では直接評価ができず,大腿骨と脛骨の軟骨下骨間距離をもってその厚みを評価しているにすぎない.したがって,荷重関節である膝関節のOAの正確な評価は,立位でのX線撮影が重要である.単純X線ではさらに,軟骨下骨の骨硬化や関節面の不整,そして関節への力学的負荷の限局化の簡便な推定の目的で下肢全体のアライメントなども評価する.進行度分類は数多く存在するが,1957年に発表されたKellgren -Lawrence(K/L)分類を用いるのがいまだ一般的である(図2)5).これは,主に関節軟骨の減少程度と骨棘形成程度により重症度分類を行う.しかし,単純X線で検出される変化は,過去の事象をとらえているに過ぎず,将来の病態進行予測はできない.さらに,膝OAの病態進行は大変緩徐であり,X線の関節裂隙狭小化により検出できる関節軟骨の摩耗は,年間0.1mm程度である.また,単純X線の感度は低く,関節内で発生した病態や初期段階での事象をとらえることは困難である.その課題の克服に向けた方策として,MRIを用いた関節内構造変化と,バイオマーカーを用いた関節内代謝動態の解析を組み入れることで膝OAのもつ限界と課題の克服が試みられている6).また,超音波を用いて半月板の荷重時の移動現象をとらえることで,膝OAの病態解明を進める試みも行われている.MRIを用いることで,軟骨変性に伴うマトリックスの変化や半月変性や損傷,また軟骨下骨の変化も鋭敏にとらえることが可能であり,現時点の関節内構造変化をより詳細に把握できる.MRIによる膝OA病態の程度評価には,Whole-Organ Magnetic ResonanceImaging Score(WORMS)という方法に従って半定正常変形性関節症関節包滑膜関節軟骨関節腔骨軟骨下骨のう胞滑膜炎(局所的)軟骨変性骨棘軟骨細線維化軟骨下骨代謝異常(硬化・骨髄異常陰影 他)図1 変形性膝関節症の病態