カレントテラピー 34-10 サンプル page 5/32
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カレントテラピー 34-10 サンプル
Current Therapy 2016 Vol.34 No.10 21957Ⅰ はじめに1 健康日本21(第2次)と変形性膝関節症日本の男女合わせた健康寿命は73.4歳と世界188カ国中第1位である1).急速な少子高齢化が進むなかで,10年後の人口動態を見据え,「目指す姿」を明らかにすることが,健康日本21(第2次)の基本的な方向性である.健康寿命の延伸は,その目指す姿の実現には必須であり,社会生活を営むための機能を高齢になっても可能な限り維持すること,そのためには生活習慣病の発症予防と重症化予防が求められている.心の健康,次世代の健康とともに,高齢者の健康のために,①ロコモティブシンドローム(以下,ロコモ)の認知度向上と②足腰に痛みのある高齢者の減少という具体的な課題が掲げられている2).本邦には現在,単純X線を用いて評価した変形性膝関節症(osteoarthritisof the knee:以下,膝OA)患者は約2,500万人程度,そのうち疼痛を伴う患者は800万人程度存在すると推定されている.移動能力維持のための足腰の痛みの対策には,腰痛の対策とともに,膝OAに伴う膝痛への対策が重要である3).Ⅱ 変形性膝関節症の病態1 病態膝OAの第一義的な病態は,関節軟骨の変性およ*1 順天堂大学大学院医学研究科整形外科・運動器医学准教授/順天堂大学大学院医学研究科スポートロジーセンター/順天堂大学大学院医学研究科運動器・腫瘍性疾患病態学*2 順天堂大学大学院医学研究科整形外科・運動器医学助教*3 順天堂大学大学院医学研究科整形外科・運動器医学准教授*4 順天堂大学大学院医学研究科整形外科・運動器医学先任准教授*5 順天堂大学大学院医学研究科運動器・腫瘍性疾患病態学教授*6 順天堂大学大学院医学研究科整形外科・運動器医学教授/順天堂大学大学院医学研究科スポートロジーセンター副センター長ロコモティブシンドローム─長寿時代の各科に必要な運動器の最新知識ロコモ原因疾患としての変形性膝関節症の病態と対策石島旨章*1・金子晴香*2・高澤祐治*3・池田 浩*4・岡田保典*5・金子和夫*6変形性膝関節症(osteoarthritis of knee:以下,膝OA)は,高齢者のロコモティブシンドローム(ロコモ)の原因となる代表的疾患のひとつである.歩行時の疼痛が主な臨床症状であり,これにより移動能力障害をきたす.近年,膝OAに対する治療ガイドラインが策定された.治療は保存的治療と外科的治療からなる.保存的治療の原則は非薬物療法と薬物療法の併用である.非薬物治療には運動療法をはじめ推奨度の高い治療法が多く存在する一方で,薬物治療は経口非ステロイド性抗炎症薬(non-steroidal anti-inflammatory drugs:NSAIDs)のみがこれに該当する.外科的治療は,人工膝関節全置換術の推奨度が最も高い.MRIによる病態の理解が進んだことで検出頻度が高まった膝OAに合併する半月板損傷に対する鏡視下半月板部分切除術の効果は,きわめて限定的であることが明らかとなった.ロコモとしての膝OAを考えた場合,健康寿命の延伸は,疼痛の病態に即した治療が可能となることで具現化されるため,病態解明をより一層進めることが重要である.