カレントテラピー 34-10 サンプル

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Current Therapy 2016 Vol.34 No.10 7943ロコモティブシンドローム― 長寿時代の各科に必要な運動器の最新知識―企画東京大学名誉教授中村耕三人は二足で立位姿勢を保ち,移動する.立位姿勢の保持は二足が囲む面である支持基底面のなかに重心を保ち続ける身体の動きである.一方,直立二足歩行はこの立位姿勢のバランスを意図的にいったん崩し,足を踏み出すことで崩れたバランスをとりなおすことの繰り返しである.歩行中の時間の大部分は片足のみでの接地で,通常歩行でも片足起立の時間が約3 / 4を占め,速度が速くなるとその比率はさらに高くなる.安定性という点ではかなり不安定な移動様式である.歩行は全身運動であり,足くびの曲げ伸ばしと足の蹴り出し,膝や股関節の曲げ伸ばし,さらに腰のひねりから腕の振りまでが時間的にも空間的にも精緻に制御されている.制御が精緻であることから,運動器のどの部分の異常であっても,効率のよい歩行は妨げられ,躓きや転びやすさにつながる.進行した運動器疾患に対する治療法のひとつとして手術療法がある.現在のわが国の整形外科入院手術例を検討すると,手術数は50歳以降に急激に増加している.疾患としては,骨粗鬆症をベースとする骨脆弱性骨折,椎間板変性を基礎とする変形性脊椎症(椎間板ヘルニア,脊柱管狭窄症を含む),関節軟骨の変性である変形性膝関節と変形性股関節症が多い.手術適応ではないがサルコペニアもある.中高年者以降では,これらの疾患が複合していることも多く,このため,個々の運動器障害だけでなく全身としての移動機能を考えることが重要になっている.ロコモは,運動器の障害によって歩行機能の低下をきたした状態をいう.運動習慣のある人はない人に比べて運動機能が高いとの報告があり,対策としてエクササイズが勧められる.中高年者では腰や膝に疾患をもっていることが多いことから,エクササイズはその不足だけでなく過剰にも注意が必要である.具体的には「スクワット」と「片足立ち」からなる基本ロコモーショントレーニング(ロコトレ)が勧められる.また,移動機能の重症度や経過を診る判断基準としての「ロコモ度テスト」も開発され,判断が容易になっている.運動は人の健康の基礎になるものであるが,病院の外来では整形外科以外の患者でもロコモと考えられる人を多く見かける.本企画では,ロコモの考え方,判断法,原因となることが多い疾患について,専門家に解説をお願いした.整形外科以外の医療従事者の方にもロコモの考え方,対処法が広がることを期待する.エディトリアル