カレントテラピー 34-10 サンプル

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80 Current Therapy 2016 Vol.34 No.101016始対象症例については,明確な骨折抑制のエビデンスは存在せず,薬剤選択は医師の裁量に任されていることになる.例外的にわが国では未承認のゾレドロン酸が既存大腿骨近位部骨折のある例に対する椎体,非椎体骨折抑制効果を有することが示され,ラロキシフェンの骨量減少例(骨密度がYAMの-2.5SDより大きく-1SDより小さい例であり,図1の70%より大きく80%未満とは異なる)に対する椎体骨折抑制効果が確認されている.表1に『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版』における薬剤の有効性の評価一覧1)を示す.ただし,この評価は先に述べたようにわが国で開発された薬剤については数%の男性を含む原発性骨粗鬆症の診断基準に合致する原発性骨粗鬆症例に対する評価であり,海外で開発された薬剤については閉経後骨粗鬆症に対する評価である.椎体骨折抑制効果についてもすべての薬剤がA評価ではないことに留意する必要がある.椎体骨折抑制効果がAである薬剤については,全薬剤が既存椎体骨折を有する例に対する二次骨折予防効果が確認されているが,既存椎体骨折がなく骨密度減少のみの例に対する一次骨折予防効果が確認されているのは,アレンドロン酸,ラロキシフェン,デノスマブに限られる(表2).また,非椎体骨折抑制効果についても評価されているが,薬剤の臨床試験によって評価対象の非椎体骨折の種類は異なり,必ずしも薬剤選択に有用とは考えにくい.そして,閉経後骨粗鬆症においてすべての骨折種に対する明確な骨折抑制効果が揃っているのは,アレンド#1:軽微な外力によって発生した非外傷性骨折.軽微な外力とは,立った姿勢からの転倒か,それ以下の外力を指す.#2:形態椎体骨折のうち,2/3は無症候性であることに留意するとともに,鑑別診断の観点からも脊椎X線像を確認することが望ましい.#3:その他の脆弱性骨折:軽微な外力によって発生した非外傷性骨折で,骨折部位は肋骨,骨盤(恥骨,坐骨,仙骨を含む),上腕骨近位部,橈骨遠位端,下腿骨.#4:骨密度は原則として腰椎または大腿骨近位部骨密度とする.また,複数部位で測定した場合にはより低い%値またはSD値を採用することとする.腰椎においてはL1~L4またはL2~L4を基準値とする.ただし,高齢者において,脊椎変形などのために腰椎骨密度の測定が困難な場合には大腿骨近位部骨密度とする.大腿骨近位部骨密度には頚部またはtotal hip(total proximal femur)を用いる.これらの測定が困難な場合は橈骨,第二中手骨の骨密度とするが,この場合は%のみ使用する.#5:75歳未満で適用する.また,50歳代を中心とする世代においては,より低いカットオフ値を用いた場合でも,現行の診断基準に基づいて薬物治療が推奨される集団を部分的にしかカバーしないなどの限界も明らかになっている.#6:この薬物治療開始基準は原発性骨粗鬆症に関するものであるため,FRAXRの項目のうち糖質コルチコイド,関節リウマチ,続発性骨粗鬆症にあてはまる者には適用されない.すなわち,これらの項目がすべて「なし」である症例に限って適用される.ない脆弱性骨折#1(大腿骨近位部骨折または椎体#2骨折)脆弱性骨折(大腿骨近位部骨折および椎体骨折以外)#3ないBMD#4がYAMの70%以下または-2.5SD以下BMD#4がYAMの70%より大きく80%未満あるBMD#4がYAMの80%未満大腿骨近位部骨折の家族歴FRAXcの10年間の骨折確率(主要骨折)15%以上#5,6薬物治療開始ある図1原発性骨粗鬆症の薬物治療開始基準〔参考文献1)より引用〕