カレントテラピー 34-10 サンプル

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Current Therapy 2016 Vol.34 No.10 791015Ⅰ はじめにわが国の『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版』1)および『ステロイド性骨粗鬆症の管理と治療ガイドライン2014年改訂版』2)は,基本的にエビデンスに基づいて作成されている.しかし,薬剤の効果については注意すべき点もある.各骨粗鬆症に関する薬物治療のエビデンスが明確なのは,閉経後骨粗鬆症,男性骨粗鬆症,ステロイド性骨粗鬆症に限られており,海外ではこれら3つの適応症が分かれており,それぞれの臨床試験が実施されたうえで適応が与えられるからである.一方,わが国では,適応症は基本的に骨粗鬆症であり,数%の男性を含む原発性骨粗鬆症の診断基準に合致する症例を対象に臨床試験が実施され,適応症が与えられる〔選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)とエストラジオールの適応症は閉経後骨粗鬆症である〕のが現状である.つまり,現時点で男性骨粗鬆症とステロイド性骨粗鬆症における薬剤の効果は海外のデータに基づいて判断するしかなく,純粋な閉経後骨粗鬆症に対する薬剤の効果も,SERMと女性ホルモン薬に関する国内のデータを除いて海外のデータに基づいて判断するしかないといえる.他のわが国のデータは原発性骨粗鬆症に対する効果とされるが,閉経後骨粗鬆症と男性骨粗鬆症に対してそれぞれの効果が確定されているわけではない.そのため,このような背景も考慮する必要がある.本稿では,原発性骨粗鬆症およびステロイド性骨粗鬆症に対するエビデンスに基づく薬剤選択について述べる.Ⅱ 閉経後骨粗鬆症に対する薬剤選択図1に『骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版』による原発性骨粗鬆症の薬物治療開始基準1)を示す.5つの治療対象が示されているが,薬剤の臨床試験は基本的に既存椎体骨折のある例と,脆弱性骨折がなく骨密度が骨粗鬆症領域にある二つの対象のみに実施されている.つまり,これら以外の薬物治療開骨粗鬆症薬の使い分け宗圓 聰** 近畿大学医学部奈良病院整形外科・リウマチ科教授ロコモティブシンドローム─長寿時代の各科に必要な運動器の最新知識閉経後骨粗鬆症に対しては70 歳以上ではアレンドロン酸,リセドロン酸,デノスマブを選択し,それ未満では選択的エストロゲン受容体調節薬,エルデカルシトールを第一選択とする.テリパラチド製剤は骨折リスクの高い70 歳前後の年代を中心に選択する.男性骨粗鬆症に対してはアレンドロン酸,リセドロン酸,遺伝子組換えテリパラチドを選択する.ステロイド性骨粗鬆症に対しては第一選択薬としてアレンドロン酸,リセドロン酸,代替治療薬として遺伝子組換えテリパラチド,イバンドロン酸,アルファカルシドール,カルシトリオールが挙げられる.a b s t r a c t