カレントテラピー 34-10 サンプル page 19/32
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カレントテラピー 34-10 サンプル
76 Current Therapy 2016 Vol.34 No.101012駆動型の装着型ロボットである14).これまで,HALによる歩行運動療法の有効性が脊髄損傷や脳卒中において示されてきた15).そして,本邦においては希少性難治性の神経・筋難病疾患患者に対するHAL医療用の医師主導治験(治験調整医師 国立病院機構新潟病院 中島孝)が終了し,その安全性・有効性が示され,2015年11月に新しい医療機器として製造販売承認を取得した16).ドイツでは2013 年から脊髄損傷などの対麻痺患者に対して公的労災保険の適用が認められていたが,2016年4月に本邦においてロボット治療として世界で初めて一般の公的医療保険が適用されることになったことは画期的である.現時点では公的医療保険の対象疾患は脊髄性筋萎縮症,球脊髄性筋萎縮症,筋萎縮性側索硬化症,シャルコー・マリー・トゥース病,遠位型ミオパチー,封入体筋炎,先天性ミオパチー,筋ジストロフィーの8疾患であるが,現在,HTLV - 1関連脊髄症などの痙性対麻痺に対する治験が進行中であり,脳卒中や脊髄損傷に対する治験も準備中である.では,HALによる歩行運動療法はなぜ有効なのだろうか.ヒトが体を動かそうとする際,その運動意図は微弱なイオン電流として,脳→脊髄→運動神経→筋肉へと伝達される.HALはヒトが歩こうとする運動意図に応じて,皮膚表面から取り出される微弱な運動単位電位信号とHAL内部のセンサーによる加速度,関節角度,床反力情報をリアルタイムに情報処理し,必要なモータトルクを発生させ,筋群をアシストし,運動を実現する.HALの制御システムは,装着者の運動意図により運動前に動作し始めるサイバニック随意制御(cybernic voluntary control:CVC),HAL 内部の運動データベースを参照し,生体電位信号が不十分でも運動を完成させるサイバニック自律制御(cybernic autonomous control:CAC),装着者に重さを感じさせないサイバニックインピーダンス制御(cybernic impedance control:CIC)により構成されており,これらの制御によって実現された運動は感覚情報として筋肉→感覚神経→脊髄→脳へとフィードバックされる.このように,HALが中枢神経系と筋骨格系を介在することでインタラクティブなフィードバックが促され,機能改善効果がより高くなると考えられる(interactive Bio-Feedback:iBF仮説).このインタラクティブフィードバックによって運動意図に基づき,HALが正しい歩行運動を実現し,その感覚情報がフィードバックされ,運動学習が効率よく行われるシステムは山海・中島らによってサイバニックニューロリハビリテーション図2HAL 医療用下肢タイプとHAL による歩行運動療法の実際