カレントテラピー 34-1 サンプル

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12 Current Therapy 2016 Vol.34 No.112載したマルチスライスCTが導入されており,このCT装置に対する適切な撮影条件の標準化が必要である.脂肪面積測定ソフトに関しても,その精度の検証や標準化が望まれる.腹部CT以外にも,腹部超音波検査法,生体インピーダンス法などによる内臓脂肪評価法がある.これらの検査法はコストが安い,被曝線量が少なく繰り返し評価ができるなどメリットをもつものもある.しかし,撮影方法や診断基準が統一されたものではなく,標準的な評価方法にはなっていない.Ⅷ 肥満症の治療肥満症治療の目的は単に体重を下げることだけではなく,肥満に伴い発症する健康障害を予防,あるいは改善することにある.津下ら(あいち健康の森健康科学総合センター)は,特定保健指導対象者から肥満症の診断基準に合致し,積極的支援を行った症例3,496人を抽出し,1年後の体重減少と,耐糖能異常,脂質異常症,高血圧,高尿酸血症,肝機能障害の5種の健康障害との関係を検討した.それによると,体重が1~3%減少するとトリグリセリド,HDL-C, HbA1c,肝機能(ALT)が,3~5%の減少で収縮期血圧,拡張期血圧,空腹時血糖に有意の改善が認められた.これまでは肥満症の健康障害の改善には5%の体重減少が必要と考えられていたが,3%というわずかな体重減少でも健康障害の改善が部分的に認められることを明らかにした.他方,高度肥満の患者に合併しやすい整形外科的疾患の改善には,一般に5%以上の減量が必要といわれている.実際の治療では,まず3~6カ月程度かけて,現在の体重の3~5%減を目指す.その後,合併する健康障害の種類だけでなく,患者の年齢や治療環境などを考慮して,減量の最終的な目標は患者ごと個別に定める必要がある.実際の肥満症の治療法は食事・運動療法を基本とする.また,そこに行動療法を加えることによって治療の長期維持効果が期待できる.さらには,近年高度肥満患者を中心に,薬物治療や外科療法も選択肢に取り入れられるようになった.食事・運動療法,薬物療法,外科療法に関する詳細は,本誌坂根,上野,佐々木らの論文を参照されたい.肥満症の治療を中心的に担うのは代謝内分泌内科医であることが多い.しかし肥満症の治療は集学的治療であり,多職種の参画が必要である.減量治療の栄養管理は内科医だけでは難しく,栄養障害を防ぎながら減量を達成するためには,管理栄養士の役割が非常に重要である.また,膝痛や腰痛など整形外科的なトラブルを避けながら適切な運動療法を進めるためには,理学療法士によるきめ細かな指導がきわめて有効である.加えて,高度肥満患者を中心に肥満症患者は心理・社会的な問題を有していることも多く,臨床心理士やソーシャルワーカー,看護師等によるサポートや指導も欠かせない.外科療法では当然外科医が中心的な役割を担う.さらには,肥満に起因ないし関連する健康障害を合併する場合には,個々の健康障害の治療に個別の診療科の専門的な治療が必要である.これら多職種の役割を有機的に機能させるためには,カンファレンス等を通じた多職種間の横の連携がきわめて重要となる.Ⅸ おわりに本稿では2011年に発表された『肥満症診断基準2011』を中心に,肥満症の診断と治療に関する現在の考え方について概説した.日本肥満学会では現在新しく「肥満症診療ガイドライン」を作成中である.同ガイドラインは最新のエビデンスの蓄積を受け作成されるものであるが,「肥満症とは,肥満に起因ないし関連する健康障害を合併するかその合併症が予測される場合で,医学的に減量を必要とする病態をいい,疾患単位として取り扱う」という現在の診断基準に謳われた基本的理念を踏襲している.さらに,2015年10月2日より名古屋にて開催された第36 回日本肥満学会総会,the 8th Asia -Oceaniaconference on Obesity(AOCO 2015)において,「名古屋宣言2015」が発表された.同宣言は,日本肥満学会が提唱した疾患単位としての肥満症の概念を,世界に向けて宣言するものである.この記念碑的宣