カレントテラピー 34-1 サンプル

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10 Current Therapy 2016 Vol.34 No.110な病態を明確化することによって,美容目的など医学的に必要のない減量が正当化される風潮を排除する,という意味でもこの診断基準は評価することができる.Ⅳ 肥満に起因ないし関連する健康障害表2には,肥満症の診断基準に必須な合併症と,診断基準には含めないが肥満に関連する疾患を示す(表2).肥満症の診断基準に必須な合併症には,耐糖能障害,脂質異常症,高血圧,高尿酸血症・痛風,冠動脈疾患,脳梗塞,脂肪肝,月経異常,妊娠合併症,睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群,整形外科的疾患,肥満関連腎臓病が含まれる.肥満関連腎臓病は,『肥満症診断基準2011』で初めて追加された合併症である.BMI 25以上の肥満でここに挙げた健康障害を1つ以上合併するものを「肥満症」と診断する.従来は,これら11疾患のうち睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群と整形外科的疾患は脂肪細胞の量的異常による合併症,それ以外の9疾患は脂肪細胞の質的異常による合併症であると表現されてきた8).しかし,前者の発症にも内臓脂肪蓄積が関与していることが報告されるなど,両群の原因を脂肪細胞の量的異常・質的異常のみで明確に分類することはできないことが明らかになってきた.疾患ごとに脂肪細胞の量的・質的異常がさまざまな割合で関与すると考えるべきであり,そのため,睡眠時無呼吸症候群や整形外科的疾患は主に脂肪細胞の量的異常が,その他の9疾患は主に質的異常がより強く関与する,という表現が妥当であろう.さらに,診断基準には含めないが,肥満に関連する疾患として,胆石症,静脈血栓症・肺塞栓症,気管支喘息,皮膚疾患などの良性疾患に加え,胆道がん,大腸がん,乳がん,子宮内膜がんといった悪性腫瘍が挙げられている.肥満はこのような疾患の発症にも関連があるとの報告があり見逃してはならない.ただし,減量はおおむねこれらの疾患の発症や治療効果に好ましい影響を与えることが多いのだが,その効果は一律ではない.例えば,胆石は減量に伴い生成が亢進することがある.また,減量がこれら悪性腫瘍の予後を改善させるかについても現在までのところ強いエビデンスはない.Ⅴ 肥満症診断のフローチャート『肥満症診断基準2011』に記された,肥満症診断のフローチャートを図に示す(図)3).診断の第一段階として,原因の有無にしたがって二次性肥満を鑑別する.二次性肥満でない場合は原発性肥満と診断され,健康障害の有無や内臓脂肪面積にしたがってさらに肥満症の診断が進められる.『肥満症診断基準2011』ではいくつかの用語の整理がなされた.そのなかで,診断基準2000の記述では混在していた単純性肥満と原発性肥満は「原発性肥満」に統一され,また症候性肥満と二次性肥満は「二次性肥満」に統一された.これらの用語は本フローチャート内にも反映されている.また,診断基準2011では「高度肥満」という用語を,BMI 35kg/m2以上と定義した.これはあくまでBMIからの定義であり,例えば若年健常力士のように医学的には減量治療を必要としないものも含まれる.したがって,高度肥満と定義される対象においても,医学的な立場から治療の必要性の有無を見極める必要がある.高度肥満に関しては,本誌齋木らの論文にその特徴や治療法などが詳述されている.Ⅵ 二次性肥満と食行動異常日常診療で肥満と診断した場合,二次性肥満および食行動異常について考慮する必要がある(図,表3).二次性肥満にはCushing症候群などの内分泌性肥満,Prader-Willi症候群のような遺伝性肥満,間脳腫瘍などの視床下部性肥満および,向精神薬など薬物による肥満が含まれる.これらの鑑別診断には各種ホルモン検査や画像診断,食生活・薬物服用歴などの問診,必要に応じて遺伝子検査を行う.一般に,二次性肥満の頻度は低いが,特に高度肥満患者では二次性肥満の頻度が上昇するといわれ,臨床的にはしばしば