カレントテラピー 34-1 サンプル page 6/34
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カレントテラピー 34-1 サンプル
Current Therapy 2016 Vol.34 No.1 99られている.日本肥満学会と世界保健機関(WHO)はいずれもBMIを用いて肥満度の判定基準を定めている(表1)3),7).どちらもBMIが18.5未満を低体重(underweight),また18.5以上25.0未満を普通体重(normalrange)とし,それ以上はBMI 5ごとにクラス分けをしている.注目すべきは,BMIが25.0以上30.0未満の扱いである.すなわち,日本肥満学会はこのクラスを肥満(1度)としているのに対し,WHOはこのクラスをover weightとし,BMI 30.0以上ではじめてObesity classⅠと定義している.日本人を対象としたいくつかの調査において,後に述べる肥満関連疾患の発症頻度がBMI 25の付近より有意に上昇すると報告されている5).そのため,国際的には肥満とは定義されていないBMI 25.0以上30.0未満のクラスから,わが国では肥満(1度)と定義されている.Ⅲ 肥満症の診断基準『肥満症診断基準2011』では,BMI 25以上の肥満のうち,肥満に起因または関連して発症する健康障害の予防および治療に減量が必要である状態を「肥満症」と定義し,ひとつの疾患単位として取り扱うこととした(表2)3).従来欧米でobesityは,他の疾患を引き起こす「危険因子」として扱われていたのに対し,同診断基準では肥満症を治療が必要な「疾患単位」として扱うことにしたのは,日本肥満学会によって生み出された新しい概念である.肥満症をこのように定義することによって,すでに肥満に関連した健康障害を有する人だけでなく,近い将来そのような健康障害の発症が予測される人(ハイリスク肥満)を効率的に抽出することが可能になった.また,減量の必要肥満と判定されたもの(BMI≧25)のうち,以下のいずれかの条件を満たすもの1. 肥満に起因または関連し,減量を要する(減量により改善する,または進展が防止される)健康障害を有するもの(下記11疾患のうちひとつ以上)2. 健康障害を伴いやすいハイリスク肥満:ウエスト周囲長のスクリーニングにより内臓脂肪蓄積を疑われ,腹部CT検査によって確定診断された内臓脂肪型肥満Ⅰ.肥満症の診断基準に必須な合併症1.耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常,など)2.脂質異常症3.高血圧4.高尿酸血症・痛風5.冠動脈疾患:心筋梗塞・狭心症6.脳梗塞:脳血栓症・一過性脳虚血発作(TIA)7.脂肪肝(非アルコール性脂肪性肝障害/NAFLD)8.月経異常,妊娠合併症(妊娠高血圧症候群,妊娠糖尿病,難産)9.*睡眠時無呼吸症候群(SAS)・肥満低換気症候群10.*整形外科的疾患:変形性関節症(膝・股関節),変形性脊椎症,腰痛症11.肥満関連腎臓病Ⅱ.診断基準には含めないが,肥満に関連する疾患1. 良性疾患:胆石症,静脈血栓症・肺塞栓症,気管支喘息,皮膚疾患(偽性黒色表皮腫,摩擦疹,汗疹)2.悪性疾患:胆道がん,大腸がん,乳がん,子宮内膜がん表2肥満症の診断基準と,肥満に起因ないし関連する健康障害*:脂肪細胞の量的異常がより強く関与する.〔参考文献3)より引用改変〕BMI(kg/m2) 日本肥満学会WHOBMI<18.5 低体重Under weight18.5≦BMI<24.9 普通体重Normal range25.0≦BMI<29.9 肥満(1度) Over weight30.0≦BMI<34.9 肥満(2度) Obesity classⅠ35.0≦BMI<39.9 肥満(3度) Obesity classⅡ40.0≦BMI 肥満(4度) Obesity classⅢ表1肥満度の判定基準BMI≧35を高度肥満と定義する.〔参考文献3)より引用改変〕