カレントテラピー 34-1 サンプル

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82 Current Therapy 2016 Vol.34 No.182サルコペニア肥満同志社大学スポーツ健康科学部教授 石井好二郎サルコペニア肥満は,1996年にカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)医学部教授のHeberらによって提唱された.ただし,Heberらは306名の肥満者のなかで生体インピーダンス法による骨格筋量が少ない集団をサルコペニア肥満として定義している.2010年にEuropean Working Group on Sarcopenia inOlder People(EWGSOP)より欧州の,2014年にはAsian Working Group for Sarcopenia(AWGS)によりアジアのサルコペニアに関するコンセンサスがそれぞれ発表された.両者の診断基準では,四肢骨格筋量(appendicularmuscle mass:AMM)を身長の二乗で除した骨格筋指数(skeletal muscle mass index:SMI)=AMM(kg)/身長(m)2 が骨格筋量の評価に用いられており,SMIの低下に身体機能(歩行速度)および筋力の低下を含んだ状態の高齢者をサルコペニアと定義している.したがって,サルコペニア肥満提唱者のHeberらの述べるサルコペニア肥満者は,現在ではサルコペニアではない可能性もある.わが国において,肥満は「脂肪組織が過剰に蓄積した状態で,body mass index(BMI)25 kg/m2 以上のもの」と定義されている.一方,サルコペニア肥満における肥満の判定にはBMI,体脂肪率,体脂肪量,ウエスト周囲長,内臓脂肪などが用いられており,統一されてはいない.なお,EWGSOPのコンセンサスを監訳した厚生労働省の研究班(2012)は,そのQ&Aのなかでサルコペニア肥満における肥満の判定には,体脂肪率を用いることを推奨しており,わが国の基準値として男性25%,女性30%が適切であろうとしている(コンセンサスが得られた状態ではないことを付記しておく).サルコペニア肥満とは,肥満とサルコペニアの両者を兼ね備えた状態であると理解されている.しかしながら,サルコペニア肥満の定義や診断基準は,いまだ定まっていない.EWGSOPおよびAWGSのコンセンサスが発表されて間もないこともあり致し方ないことであるが,サルコペニア肥満に関する先行研究は,肥満とサルコペニアの判定基準の種類,基準値,ならびに組み合わせがさまざまであることを認識しなければならない.また,サルコペニア対象者のほとんどは低体重であり,肥満とは認識されにくい.したがって,サルコペニア肥満は「サルコペニア and 肥満」とは違った新たな概念が必要であるかもしれない.