カレントテラピー 34-1 サンプル

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Current Therapy 2016 Vol.34 No.1 8181肥満と睡眠愛知医科大学医学部睡眠科教授 塩見利明臨床医は睡眠障害の患者を知らぬ間にたくさん診察している.特に内科領域で遭遇しやすい睡眠障害の二大疾患は,不眠症と睡眠呼吸障害である.この2つの睡眠障害はとても身近な話題のため,“習わなかったから気づかなかった”では,もう済まされない時代が到来している.まず,内科などの臨床医は運動習慣と同様に睡眠習慣の獲得法についても早急に学ぶべきであろう.次に睡眠障害とは何かを詳しく「知る」こと,また睡眠障害を正しく「診る(診察する)」こと,そして睡眠障害を適切に「治す」ことを,系統的に学び直すことから始めるべきである.24時間型社会とも呼ばれる現代では,インターネットや多様なメディアの普及,コンビニなど深夜営業の増加により,夜の光環境(LED照明等)が急激に変化している.睡眠不足の人や夜型(睡眠相後退型)の人が増え,老若男女を問わず,「現代は誰でも不眠になり得る時代(現代の不眠)」である.睡眠不足と肥満の関連性については,短い睡眠時間が体重の増加に関連し,肥満発症の原因になる.ヒトの睡眠時間の実験的な制限時にレプチン(満腹ホルモン)が減少し,グレリン(食欲刺激ホルモン)が増加するという有名なSpiegelらの研究は,睡眠不足が空腹感をもたらし,肥満の原因にもなることを裏づけている.肥満と密接に関連し急増している睡眠の病気は,大いびきで寝ている間に,呼吸が止まってしまう睡眠時無呼吸症候群(sleep apneasyndrome:SAS)である.SASは肥満に伴う生活習慣病やメタボリックシンドロームと密接に関連し,高血圧や糖尿病の合併率が高い疾患である.われわれの調査では,日本人のSASのうち25.9%に2型糖尿病,62.7%に耐糖能異常を合併していた.最近は,SASと循環器疾患の密接な関係が注目されている.睡眠医療が予防医学に果たす役割は少なくない.不眠の治療はうつ病と自殺の予防に,またSASの治療は居眠り運転事故および,高血圧や心血管病発症の予防に有益である.そのため,不眠やSASなどの睡眠障害の早期診断と早期治療は,肥満を代表とする生活習慣病やメタボリックシンドロームの治療と同等の医学的な重要課題として非常に意義がある.〈参考図書〉睡眠無呼吸症─広がるSASの診療─(塩見利明編).朝倉書店,東京, 2013最近の日本人の肥満症─ 新知見が拓くこれからの肥満症診療