カレントテラピー 34-1 サンプル page 23/34
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カレントテラピー 34-1 サンプル
Current Therapy 2016 Vol.34 No.1 6363Ⅰ はじめに本邦でも食生活やライフスタイルの近代化に伴い,糖尿病をはじめとする生活習慣が増加しており,その基盤となる肥満対策が急務とされる1)~4).しかし,肥満者に対し,「もっと体重を減らしなさい」,「もっと運動しなさい」と一方的に減量指導を行うと,「食べていないのに太る」,「夜の食事が遅い」,「運動する時間がない」,「食事制限をすると力が出ない」,「酒を止めるとストレスが溜まる」などとさまざまな言い訳をすることがある.これを心理学では「抵抗」と呼んでいる.この抵抗を減らし,楽しく減量に取り組んでもらう指導がわれわれ医療従事者には求められている.そこで,本稿では「食事,運動を主とした包括的な肥満症の治療」と題して,減量を成功させ,リバウンド予防に留意した包括的な肥満症治療の実際について概説する.Ⅱ 食事療法肥満はエネルギー摂取とエネルギー消費のアンバランスを特徴とするエネルギー代謝異常であり,その結果,脂肪組織に中性脂肪が過剰に蓄積した状態と定義される.肥満症治療食の分類は200 kcal刻みで5段階に分けられ,1,000kcal/日~1,800kcal/日の肥満症治療食と,600kcal/日以下の超低エネルギー食(very low calorie diet:VLCD)に分けられる.例えば,50代男性の肥満症(身長170cm,体重68kg,BMI 23.5)の場合,体重は1.70×1.70×22≒63.6kg,体重当たりの必要エネルギー量は25~30を乗じて,* 国立病院機構京都医療センター予防医学研究室長最近の日本人の肥満症─ 新知見が拓くこれからの肥満症診療食事,運動を主とした包括的な肥満症の治療坂根直樹*巷ではダイエットに関する健康情報が氾濫している.それらの情報に左右され,自己流のダイエットに取り組み,リバウンドを繰り返している人も多い.肥満症治療の目標は,健康寿命を延伸するために,減量体重を維持させることにある.そのため,食事と運動療法を主とした減量期と維持期に分けた包括的な治療が必要となる.しかしながら,減量に成功するのは必ずしも容易ではない.低脂肪食であれ,糖質制限食であれ,食事療法のアドヒアランスが高ければ,ある程度の減量効果が得られるが,減量を成功させるには肥満者の心理,食行動や生活環境に留意しておくことが大切である.体重のリバウンドは,休日やイベントなどから起こる場合が多い.減量体重を維持するためには,満足した食事,運動療法,体重測定,良質な睡眠がキーワードとなる.われわれ医療従事者は減量を成功させ,維持させるために,減量指導に役立つ最新のエビデンスとスキルを身につけておきたい.