カレントテラピー 34-1 サンプル

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48 Current Therapy 2016 Vol.34 No.148BMI 25以上35未満の場合25kcal/kg×標準体重,BMI 35以上では20kcal/kg×標準体重で設定し,総エネルギー摂取量に占める栄養素のバランスを,炭水化物50~60%,たんぱく質1.0~1.2g×標準体重/日(50~80g/日,20%以下に相応)として,残りのカロリーを脂質に振り分ける(25%以下)11).最近,話題になっている糖質制限については,『日本人の糖尿病の食事療法に関する日本糖尿病学会の提言』(2013年3月)のなかで,食事療法本来の効果のみならず,長期的な遵守性や安全性について担保するエビデンスも不足しているため,現時点では薦められないと提唱している.国民健康・栄養調査の結果では,日本人の総エネルギー量,炭水化物や食物繊維の摂取量は減少傾向,反対に脂質とくに動物性脂肪摂取量は増加傾向にあり,動物性脂肪に偏らないよう,総エネルギーに占める飽和脂肪酸の割合が7%を超えないよう推奨されている.食後高血糖の改善にも効果のある食物繊維については,食物繊維の摂取が多いほど肥満が軽度であると報告されており12),糖尿病の食事療法としても肥満症の食事療法としても1日20~25g以上の摂取が望ましい.野菜,副食,主食といった摂取の順番が,インクレチンの分泌や体重減少,血糖降下と関連するといった学会報告や,総エネルギー摂取量が同じであっても夕食より朝食で高エネルギーを摂取するほうが,1日の総食後高血糖が低下する13),といった食事のエネルギー配分に関する興味深い報告もあり,糖尿病や肥満に対する食事のあり方については,現在も研究が進んでいる.Ⅳ 肥満2型糖尿病に対する薬物療法本邦では肥満症治療薬として,マジンドールとセチリスタットの2剤が承認を受けており,糖尿病治療薬として,2種類の注射製剤と7種類の経口血糖降下薬が承認され,現在使用されている(図4).体重増加をきたしやすい糖尿病治療薬として,インスリン製剤,インスリン分泌促進薬であるスルホニル尿素薬と速効型インスリン分泌促進薬,チアゾリジン薬の4 種がある.なかでもインスリン製剤とチアゾリジン薬による体重増加の程度は大きい.これらの薬剤を使用する際には,厳格なカロリー制限による体重管理がより重要になり,食事・運動療法をおろそかにしながら使用すると肥満をさらに助長し,インスリン抵抗性の病態をかえって悪化させる可能性もある.元々インスリン抵抗性による高インスリン血症を認めることが多い肥満2型糖尿病では,インスリン製剤やインスリン分泌促進薬(SU薬,グリニド薬)は第一選択薬としては選択されにくい.しかし,HbA1cが10%を超すようなきわめて血糖コントロールが不良な状態では,ブドウ糖毒性を解除する目的で,厳格な食事管理の下,インスリン頻回注射から導入するケースがある.インスリン製剤により一時的に良好な血糖状況をつくることによってインスリン抵抗性が改善し,インスリン分泌能が保たれている症例では,開始したインスリン製剤を中止することができることが多い14).チアゾリジン薬は体重増加をきたすが,内臓脂肪よりも皮下脂肪が増加すると考えられており,NASH/NAFLDを改善することも報告されている.インスリン抵抗性を改善する作用を有するたTZinsulinGLP-1RABG SUDPP-4iglinideα-GI減少増加体重大血糖降下作用小SGLT2i図4 糖尿病治療薬(血糖降下作用と体重変化)現在使用可能な糖尿病治療薬(血糖降下作用と体重変化の違い)GLP -1RA:GLP -1受容体作動薬,SGLT2i:SGLT2阻害薬,BG:ビグアナイド薬,SU:スルホニル尿素薬,DPP-4i:DPP-4阻害薬,TZ:チアゾリジン薬,glinide:グリニド薬,α-GI:α-グルコシダーゼ阻害薬