カレントテラピー 34-1 サンプル

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46 Current Therapy 2016 Vol.34 No.146Ⅱ インスリン抵抗性と分泌能2型糖尿病の発症・進展には,肥満が大きなリスク因子となるが,肥満のなかでも,特に内臓脂肪型肥満がかかわっている.端野・壮瞥町研究においても腹部肥満(ウエスト周囲長男性85cm,女性90cm以上)が,2.6倍の糖尿病発症リスクになることが示されている3).内臓脂肪蓄積によるインスリン抵抗性の増悪の分子学的機序の説明については他項に譲るが,ここ10年間でもさまざまなことが明らかになってきており,さらに詳細な研究が進行中である.日本人を含むアジア人は欧米人と比較して,インスリン分泌能が低下しており4),さらに,皮下脂肪よりも内臓脂肪が蓄積しやすく5),わずかな体重増加でも内臓脂肪増加によるインスリン抵抗性を惹起しやすいと考えられている.すなわち,日本人はわずかな小太りでも耐糖能異常を容易に生じやすいため,糖尿病を発症しないためにも太らない注意が必要であると言える.本邦における2型糖尿病の増加は,このような体質的素因のうえに,内臓脂肪蓄積型肥満が増加したことに起因する.最近の研究では,エネルギー消費系の褐色脂肪細胞(ベージュ細胞)が寒冷刺激などでヒトにも誘導されてくることが指摘されている.高齢者や肥満者ほどベージュ細胞の発現が低いことも明らかにされており,肥満になりやすさを検討するうえで興味深いところである6).内臓脂肪蓄積によりインスリン抵抗性が増大してくると,初期のうちは代償的に膵インスリン分泌が増加し,血糖上昇に抗することになるが,その状態が続くと,酸化ストレスや小胞体ストレスを介した膵β細胞死もしくは膵β細胞の脱分化が起こり,膵β細胞数の減少と膵β細胞機能破綻が生じてくる.2型糖尿病の診断がついた時には,すでに膵β細胞機能はもとの半分程度にまで低下しているとされており7()図2),その後も膵β細胞機能は継時的に減少していくため8()図3),病期が進んでしまうと,肥満糖尿病患者でもインスリン治療が必要になってくる.内臓脂肪組織が過剰に蓄積しても問題であるが,余剰エネルギーを貯蓄する働きをもつ脂肪組織が,全身から減りすぎることも問題になる.例えば,脂肪萎縮症は,本来脂肪を貯めこむべきではない肝臓や骨格筋などに過剰な異所性脂肪蓄積が起こり,重度の糖尿病や脂質異常症,脂肪肝など,種々の糖脂質代謝異常をきたすことになる.そして,脂肪萎縮性糖尿病は,強いインスリン抵抗性のために従来の経口血糖降下薬やインスリンでは十分な血糖コントロールが得られないことが多く,レプチンの補充療法〔メトレレプチン(遺伝子組換え)の1日1回皮下注射〕が,2013年に治療薬として承認され保険収載された.Ⅲ 肥満2型糖尿病の治療2型糖尿病の発症予防に関する米国のDiabetes PreventionProgram(DPP)では,約3年間での境界型からの糖尿病発症を,ライフスタイルの改善群で51%減少させ,糖尿病治療薬であるビグアナイド薬による120空腹時血糖値(mg/dL)BMI(kg/m2)110100908017 18 19 20男女男女21 22 23 24 25 26 27 28 29 3035302520糖尿病の頻度(%)BMI(kg/m2)15105017 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30図1 日本人におけるBMIと糖尿病頻度の関係〔宮崎 滋:肥満と糖尿病.月刊糖尿病ライフ さかえ 5:7-13, 2015より引用〕