カレントテラピー 34-1 サンプル

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30 Current Therapy 2016 Vol.34 No.130とが報告されている.その他,好酸球が非肥満の脂肪組織に多く存在し,IL - 4やIL - 13の産生を介してM2マクロファージの維持に関与している可能性も示唆されている.さらに,肥満の脂肪組織では,脂肪細胞の肥大化に伴うストレスや炎症性の障害に伴い脂肪細胞死が引き起こされ,脂肪細胞機能異常へ進展する.細胞死に陥った脂肪細胞はマクロファージをはじめとした免疫担当細胞により貪食・処理される.この結果,肥満の脂肪組織では,細胞死に陥った脂肪細胞をマクロファージが取り囲んで貪食・処理する組織構造であるcrown-like structure(CLS)が認められる(図4)13).CLSは主にM1マクロファージにより形成され,全身のインスリン抵抗性とも相関を示すことが報告されている.筆者らは,このCLSを起点として脂肪細胞とマクロファージが飽和脂肪酸やTNFαを代表とする液性因子を介して相互作用することにより,持続的な炎症反応が維持される機構を世界に先駆けて証明した14).マクロファージ由来のTNFαは脂肪細胞の炎症性サイトカイン産生を促進し,また脂肪分解を促進することで脂肪組織の局所に遊離脂肪酸を過剰に放出する.放出された遊離脂肪酸は免疫担当細胞表面に発現する遊離脂肪酸のセンサーであるTLR 4を介してマクロファージを一層活性化させる.このような,CLSを起点とした悪循環が形成されることで,脂肪組織炎症がさらに増強されると考えられる(図3).さらに筆者らは,脂肪細胞とマクロファージとの相互作用により誘導される新たな炎症制御分子として,転写因子であるactivatingtranscription factor 3(ATF3)15)とATF416),macrophage-inducible C-type lectin(Mincle)を同定した17).ATF 3とATF 4は小胞体ストレスや酸化ストレス,飽和脂肪酸により活性化され,TLR 4を介する炎症シグナルをそれぞれ正と負に制御する.一方,Mincleは結核菌や真菌に対する新規病原体センサーであり,CLSのM1マクロファージに高発現する.Mincleは死細胞に対するセンサーとしての機能も報告されており,死に陥った脂肪細胞からの何らかの内因性リガンドにより活性化されている可能性も高く,CLSにおける意義が注目される(図5).Ⅳ 脂肪組織の線維化の分子メカニズム脂肪組織の慢性炎症が遷延すると,実質細胞の脱落や細胞外器質の増加に基づく組織線維化が認められる5).脂肪組織の線維化は,脂肪蓄積能の低下に引き続く異所性脂肪蓄積の増加に基づく代謝異常を誘導し得る.脂肪細胞の線維化に対する効果的な制御手段が求められているが,脂肪組織の線維化の分子機構はほとんど明らかではない.一般に組織線維化にはコラーゲンを中心とした種々の線維化関連分子が関与し,脂肪組織においては線維芽細胞から産生されるコラーゲンや,脂肪細胞自体から産生されるⅥ型コラーゲンが寄与することが報告されている.実際,脂肪組織に特異的なⅥ型コラーゲンを遺伝的に欠損しているマウスでは,肥満に伴う脂肪細胞の肥大化や脂肪組織重量の増加が顕著である一方,異所性脂肪の蓄積は有意に減少すると報告されている18).また,多くの慢性炎症モデルにおいて,マクロファージは線維化の制御に重要な役割を果たすが,脂肪組織においてはいまだ知見が乏しい.筆者らは,マクロファージにおけるMincle活性化がtransforminggrowth factor- β(TGF- β)などの発現の亢進を介し筋線維芽細胞を活性化させ,脂肪組織線維化に対し促進的に作用することを見出した(図5).実図4 Crown-like structure(CLS)