カレントテラピー 34-1 サンプル page 12/34
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カレントテラピー 34-1 サンプル
28 Current Therapy 2016 Vol.34 No.128ポサイトカイン)の分泌動態が皮下脂肪組織と異なる.すなわち,内臓脂肪の蓄積に伴ってtumor necrosisfactor-alpha(TNFα)やinterleukin(IL)- 1を代表とする炎症性サイトカインが皮下脂肪組織と比較しより多く分泌され,逆に,抗炎症作用や糖代謝改善作用のあるアディポネクチンの分泌が低下しやすいことが報告されている2).これにより,皮下脂肪組織と比べて内臓脂肪組織は,インスリン抵抗性の増悪などに基づき糖尿病や高血圧を含むさまざまな代謝異常をきたしやすいと考えられている.脂肪組織の炎症に伴って増加するTNFαを代表とする炎症性サイトカインは,脂肪分解作用を有しており,遊離脂肪酸の過剰な血中放出をもたらす.また,内臓脂肪組織はインスリンによる脂肪分解抑制作用に比較的抵抗性であることも,遊離脂肪酸を放出しやすいことにつながる.この結果,肝臓,骨格筋,膵臓などの非脂肪組織に異所性脂肪として脂肪の蓄積が増加し,インスリン抵抗性や膵β細胞機能不全に基づく代謝異常を誘導すると想定される(図2)3),4).また,脂肪組織における炎症が遷延すると,脂肪組織の線維化が促進されるが,このような線維化をきたした脂肪組織では脂肪蓄積能が減少し,さらに遊離脂肪酸を放出しやすい状態になると考えられている5).その他,内臓脂肪の蓄積は加齢に伴って増加すること,男性のほうがより蓄積しやすいこと,エストロゲンや成長ホルモンなどホルモンの影響を受けること,人種差や個体差が存在することが報告されている1).また,内臓脂肪組織では,皮下脂肪組織の許容量を超えた際に脂肪蓄積が引き起こされるとも考えられており,脂肪組織部位の機能の違いが関与する可能性も示唆されている6).このように,内臓脂肪の過剰な蓄積による脂肪組織の慢性炎症は,アディポサイトカインや遊離脂肪酸をメディエーターとする臓器間のネットワークを介して全身臓器に波及し,さまざまな生活習慣病の発症に至ると考えられる.次項より,脂肪組織の慢性炎症や線維化に基づく病態メカニズムについて,最近の知見を紹介する.Ⅲ 脂肪組織の慢性炎症の分子メカニズム過栄養の状態では,脂肪細胞の肥大化や細胞数の増加から脂肪蓄積量が増加し,肥満が進行する.肥満を呈した脂肪組織では脂肪細胞の肥大化に伴い,小胞体ストレスや低酸素などの種々のストレスが生じ7),マクロファージなどの免疫担当細胞の浸潤や血管新生の増加に伴う機能の変化が認められる8).浸潤した免疫担当細胞は,TNFαやmonocyte chemoattractantprotein- 1(MCP- 1)を代表とする炎症性サイトカインやケモカインを産生・分泌し,炎症細インスリン抵抗性インスリン分泌不全肝臓骨格筋膵臓炎症細胞の浸潤肥大化インスリン抵抗性遊離脂肪酸異所性脂肪の過剰蓄積線維化炎症性サイトカイン( TNFα, IL-1)脂肪蓄積能の低下アディポサイトカイン分泌異常図2 慢性炎症に基づく脂肪細胞機能異常と異所性脂肪の過剰蓄積1122334455大網脂肪組織深部皮下脂肪組織浅部皮下脂肪組織腸間膜脂肪組織後腹膜脂肪組織皮下脂肪組織内臓脂肪組織図1 皮下脂肪組織と内臓脂肪組織〔参考文献1)より引用一部改変〕