カレントテラピー 33-9 サンプル

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8 Current Therapy 2015 Vol.33 No.9852Ⅰ はじめにC型肝炎ウイルス(hepatitis C virus:HCV)が1989年に世界で初めてクローニングされてから25年という短い間に,検査,診断,治療が世界規模で推進されてきた.特に,わが国では,輸血用血液のスクリーニングへのHCV抗体検査導入,「肝炎対策基本法」の施行等,先駆的に感染予防対策や医療費助成を含めた肝炎肝癌対策を国の施策として進めてきている.一方,近年ではウイルス排除率のきわめて高いHCVの酵素活性に直接作用する抗ウイルス薬(direct actingantivirals:DAA)等が次々認可されていることから,HCV感染の有病率や罹患率という疫学的視点からみると,新しい「HCV感染の疫学」の時代を迎えているとも考えられる.本稿では,現状におけるHCV感染の疫学的状況について整理し,今後の課題について考察する.Ⅱ 1950年から2012年までの肝癌死亡の推移とその成因わが国の死因第1位は,1981年(昭和56年)以降,一貫して「悪性新生物」(死亡数:364,872人,人口10万対290.3,人口動態統計2013年)であり1),前年2012年より約4,000人増加し全死因の28 . 8%を占めている.長い間,死因の第2位は心疾患,第3位は脳血管疾患であったが,2011年以後,第3位が肺炎,第4位が脳血管疾患と入れ替わり,これら四大死因による死亡が死亡者全体の約64%を占めている.悪性新生物による死亡を部位別にみると,「肝」(肝*1 広島大学大学院医歯薬保健学研究院疫学・疾病制御学教授*2 広島大学大学院医歯薬保健学研究院疫学・疾病制御学特任准教授肝炎治療の今後の展望― ウイルス肝炎は克服されるかわが国におけるHCV感染の疫学田中純子*1・片山恵子*2わが国の肝癌死亡は男女ともに減少傾向にあり,直接作用型抗ウイルス薬(direct actingantivirals:DAA)導入によりさらに減少すると考えられている.肝癌死亡のうち,約8割はC型肝炎ウイルス(hepatitis C virus:HCV)あるいはB型肝炎ウイルス(hepatitis B virus:HBV)の持続感染に起因し,そのほとんどがHCVの持続感染によるものであるが,非B非C型によるものが増加傾向にある.HCVキャリア率は地域によって多少の高低差が認められるが,高年齢層で非常に高く,若年層ではきわめて低い値を示している.この20年で感染を知らないまま社会に存在しているHCVキャリアは減少していると考えられるが,未だに感染を知らずにいる人々は相当数存在すると考えられ,肝炎ウイルス検査の推進が一層重要となっている.また同時に,検査で陽性と判定されたHCVキャリアが適切な治療に結びついているかどうかが次の課題となる.医療機関への受診と継続受診を含めた適切な治療導入対策が必要である.