カレントテラピー 33-9 サンプル page 20/32
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カレントテラピー 33-9 サンプル
70 Current Therapy 2015 Vol.33 No.9914薬と偽薬(プラセボ)間の群間比較ではなく,実薬群の投与前後における検査値の比較である.二重盲検法と称しても群間比較に有意差がない論文が多かった4).また無作為割付試験と称する論文では,2群間の症例数が大きく異なり,正確なランダム化が行われたか疑問が残るものも存在した.興味ある現象として,偽薬群でもトランスアミナーゼが有意に低下し,その意味づけが困難とされた5).この現象は「入院効果,偽薬効果」といわれ,安静臥床による効果と推定された6).治験の多くは入院で行われており,入院の選択基準を満たした患者が対象となった.すなわち肝炎の急性増悪例が選択されたため,偽薬群でも肝機能検査値の改善が観察されたと考えられる.B型慢性肝炎ではこのような急性増悪はシューブと呼称される.治験論文にみられる検査値の改善は,急性増悪例を選択したという,選択バイアスの影響が否定できない.肝庇護薬としてはUDCAとSNMCのみを知っていればよい.臨床実地の場でUDCAとSNMC以外の肝庇護薬を処方している肝臓専門医はほとんどいないのが現状である.肝庇護薬はウイルス肝炎の予後を改善するとは証明されていないため,必ず使用しなければいけない薬であるとはいえない.小ショウ柴サイ胡コ湯トウは慢性肝炎に保険適用を有するが,肝硬変に投与したり,IFNと併用すると間質性肺炎の合併があるため,禁忌となっている.間質性肺炎による死亡例の報告もあるため,安易に使わないほうがよい薬である.Ⅲ ウルソデオキシコール酸UDCAは,クマの胆汁中に含まれ,昔から消化器症状の改善に用いられた漢方薬「熊ユウ胆タン」の薬効成分が起源である.熊胆の主成分がUDCAで,ヒトの胆汁酸中にもわずかながら含まれている.UDCAは腸肝循環をすることで高率的に肝の障害部位に到達し効果を発現する.UDCAの作用機序としては,細胞障害性の強い疎水性胆汁酸を細胞障害性のない親水性UDCAに置換する置換作用,肝細胞膜保護作用(抗酸化ストレス作用,抗アポトーシス作用),免疫調節作用(局所免疫抑制作用,抗炎症作用),利胆作用などがある7).胆汁中胆汁酸組成のうちUDCAが占める割合は通常では0 . 6%とわずかであるが,UDCAを服用することで40.1%にまで上昇する(図1)8).UDCAの肝機能改善効果は1日150mgから認められるが,600mgおよび900mgのほうがより改善を認めた9).UDCA投与前と比べたALT低下率は,150mg投与群は15.3%,600mg投与群は29.2%,900mg投表3 二重盲検法による慢性肝炎に対する肝庇護薬の効果AST ALT γ-GTP ALP TTT ZTT TP Alb Ch-E ICG 15分BSP 45分SNMC *** *** (***) * ** *アデラビン* * (***)(***) (*) * (***)タチオン* **チオラ* * (***) (***) *プロヘパール(***) * * *カンテック(**) (*) (**) (***) *** ***キャベジン* (***) (**) (*) (**) (*)リバオール(*) (*) (*)EPL (*) (***)ウルソ(**) (**) (*)小柴胡湯(*) (*) (*)セロシオン(***) **:p<0.05,**:p<0.01,***:p<0.001( )は群内比較で有意差があった項目.〔参考文献3)より引用改変〕