カレントテラピー 33-9 サンプル

カレントテラピー 33-9 サンプル page 11/32

電子ブックを開く

このページは カレントテラピー 33-9 サンプル の電子ブックに掲載されている11ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
カレントテラピー 33-9 サンプル

14 Current Therapy 2015 Vol.33 No.9858往のない約315万人の献血者を対象として5年間の観察研究を行った結果,66人の新規HCV感染が観察された.HCV新規発生率は10万人あたり0.7人と推定され,男女差は認められなかった.この値は前述した広島県における90年代の同様の調査で得られた値から半減しており,問診の強化などバイアスがあるものの2000年以後のHCV新規感染はさらに低下したと推定される.また,血液透析患者を対象とした多施設前向き調査成績13)では,3カ月以上の観察が可能であった2,114人の血液透析患者のうちHCV感染の新規発生数は16人であり,HCV新規感染率は1,000人年あたり3.3人(95%CI:1.7~4.9人/1,000人年)と推計された.一般集団ではHCV感染の新規発生はごく稀であるが,血液を介する感染の可能性があるハイリスク集団におけるHCV発生率は供血者集団と比較して102倍程度高い頻度を示すことが明らかとなっている.女性の中高年齢層の新規感染確認調査,およびハイリスク集団のHCV感染防止対策は引き続き重要と考えられる.Ⅶ おわりにわが国では,この20年間,HCVキャリア率の増加は認められていない.その理由としてわが国のHCV新規感染が低率であり新たなHCVキャリアの発生が多くなかったこと,高年齢層のHCVキャリア率が高いことからコホート効果により全体のHCVキャリア率が低下したことなどによるものと考えられる.今後,肝炎・肝癌対策の推進により,肝炎ウイルス検査により感染していることが判明したHCVキャリアの医療機関受診率および受療率が上昇し,治療効果の高い新たな抗ウイルス療法が導入されることによって,肝発癌リスクをもつHCVキャリアは減少することが期待される.著効率の高いDAAの導入時代に突入したことから,肝炎ウイルス検査受診の推進,未検査率の高い職域集団への介入,医療機関を継続的に受診していないHCVキャリアへの継続受診と受療勧奨および適切な治療導入を行う対策の強化が必要とされる時期にきているといえる.参考文献1)厚生労働省:平成25年(2013年)人口動態統計(確定数)の概況.(http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei13/)2)日本肝癌研究会:第19回全国原発性肝癌追跡調査報告(2006~2007).日本肝癌研究会事務局,大阪,20143)Perz JF, Armstrong GL, Farrington LA, et al:The contributionsof hepatitis B virus and hepatitis C virus infections tocirrhosis and primary liver cancer worldwide. J Hepatol 45:529-538, 20064)Tanaka J, Koyama T, Mizui M, et al:Total numbers of undiagnosedcarriers of hepatitis C and B viruses in Japan estimatedby age- and area-specific prevalence on the nationalscale. Intervirology 54:185-195, 20115)大規模集団のキャリア率をもとにしたキャリア数推計の試み.平成21, 22年度 肝炎等克服緊急対策研究事業 肝炎ウイルス感染状況・長期経過と予後調査および治療導入対策に関する研究 研究報告書,2010, 20116)平成26年度厚生労働科学研究費補助金 肝炎等克服政策研究事業「急性感染も含めた肝炎ウイルス感染状況・長期経過と治療導入対策に関する研究」班 報告,20157)肝炎ウイルス検査後の意識動向調査の結果報告─2013年度版─平成25年度 厚生労働科学研究費補助金 肝炎等克服緊急対策研究事業 急性感染も含めた肝炎ウイルス感染状況・長期経過と治療導入対策に関する研究 研究報告書.197-202, 20148)広島県における肝炎ウイルス検査・治療に関する啓発活動と効果の検証《広島県におけるフォローアップ事業,検査後の通知の方策》─平成25年度 厚生労働科学研究費補助金 肝炎等克服緊急対策研究事業 急性感染も含めた肝炎ウイルス感染状況・長期経過と治療導入対策に関する研究 研究報告書.173-186, 20149)World Health Organization:Hepatitis C.(Global Alert andResponse, 2002). Geneva, Switzerland:World Health Organization;2002.(http://www.who.int/csr/disease/ hepatitis/whocdscsrlyo2003/ en/index.html)10)Tani Y, Aso H, Matsukura H, et al;JRC NAT ScreeningResearch Group:Significant background rates of HBV andHCV infections in patients and risks of blood transfusionfrom donors with low anti -HBc titres or high anti -HBctitres with high anti-HBs titres in Japan:a prospective, individualNAT study of transfusion-transmitted HBV, HCV andHIV infections. Vox Sang 102:285-293, 201211)Tanaka J, Mizui M, Nagakami H, et al:Incidence rates ofhepatitis B and C virus infections among blood donors inHiroshima, Japan, during 10 years from 1994 to 2004. Intervirology51:33-41, 200812)平成26年度厚生労働科学研究費補助金 肝炎等克服政策研究事業「急性感染も含めた肝炎ウイルス感染状況・長期経過と治療導入対策に関する研究」班 報告書,201513)Kumagai J, Komiya Y, Tanaka J, et al:Hepatitis C virusinfection in 2,744 hemodialysis patients followed regularly atnine centers in Hiroshima during November 1999 throughFebruary 2003. J Med Virol 76:498-502, 2005