カレントテラピー 33-9 サンプル

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Current Therapy 2015 Vol.33 No.9 13C型肝炎治療の現在と今後の展望857目的で自治体との共同で行った無記名自記式調査の結果7),住民検診肝炎ウイルス検査で陽性と判定された2,177人のうち,「検査を受けたことを忘れていた者」は14.3%,受検したことは覚えているが結果通知が「陰性」であると間違って認識していたのは9.3%にのぼった.したがって,検査で「陽性」と判定されたキャリアの医療機関受診率は66.2%と低率であり,1/3は医療機関を受診していないことになる.これらのことから,「陽性」判定を通知する際には,医療機関受診の必要性と受診勧奨のための具体的な情報提供をすることが重要である.そこで,厚生労働省研究班では,肝炎ウイルス検査を受けた人全員に,検査結果を伝える際に説明用下敷きを用いて説明を行い,カード(「肝炎ウイルス検査の記録」:検査日を記録)を配布する取り組み8)を開始している.一方,肝炎対策基本法に基づいて告示された「肝炎対策基本指針」では「手術前等に行われる肝炎ウイルス検査の結果の通知について,受検者に適切に説明を行うよう」医療機関に要請している.効果が期待できるHCV治療薬の開発が続くなか,世界でも類をみない医療費助成制度を適切に活用し,検査で「陽性」と判明した受検者が適切な治療を受けられるような仕組みを構築することが期待される.Ⅵ HCV新規感染率について輸血用血液のスクリーニングとしてHCV抗体検査が導入される1992年以前には,世界中の輸血後肝炎の主な原因はHCVであったこと,特に米国における輸血後肝炎の90%はHCVによるものであったことを世界保健機関(WHO)は報告9)している.わが国においても同様の状況であったと推定され,1999年10月から導入された核酸増幅検査(nucleic acid amplificationtest:NAT)により,輸血に伴うHCV感染はほぼ駆逐されたと言える状況となっている10).輸血以外の水平感染によるHCV新規感染についてこれまでに得られた疫学的調査結果を示す.広島県赤十字血液センターにおける1994年6月から2004年4月までの供血者418 , 269人(総献血本数1,409,465本)を対象とした前向き調査11)では,期間内に複数回献血をした218,797人(861,842人年)のうち新たにHCV感染が確認されたのは16人であった.HCV新規発生率は10万人年あたり1.86人(95%CI:1.06~3.01人,男性:1.08人,女性:2.77人)と推定された.また,20 歳代女性(同3.21人),50 歳代女性(同6.02人)の新規感染率がやや高い傾向が認められた.2000年以後のHCV新規感染率については,厚生労働省肝炎疫学研究班と日本赤十字社が共同で行った研究から,中間報告値を紹介12)する.HCV感染既対象者新規感染者/観察人年HCV罹患率(95%CI)供血者 広島1992~1995 114,266人3/168,726人年1.8/10万人年(0.4~5.2)1994~2004 218,797人16/861,842人年1.9/10万人年(1.1~3.0)1992~1997 448,020人59*/1,095,668人年5.4*/10万人年(4.1~7.0)定期健康診断受診者 広島1992~1995 3,079人0/5,786人年0/1,000人年(0~0.6)1992~1999 6,549人0/27,409人年0/1,000人年(0~0.1)障害者・老人福祉施設入所者 静岡1988~1992 678人0/2,712人年0/1,000人年(0~1.3)血液透析施設 広島1999~2003 2,744人16/58,720人月33/1万人年(17~49)供血者 全国2008~2013 3,149,779人66/9,089,274人年0.7/10万人年(0.6~0.9)図5各種集団におけるHCV感染の新規発生率(1988-2013)*HCV抗体陽性〔J Epi 6:198-203, 1996J Med Virol 76:498-502, 2005Intervirology 51:33-41, 2008より引用改変〕