カレントテラピー 33-8 サンプル

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Current Therapy 2015 Vol.33 No.8 97452002年に発表したものはガイドラインでそれ以降はリコメンデーションである.一般にガイドラインは60~95%の患者に適応できる基準とされている2)が,リコメンデーションはガイドラインに到達するための手段という意味合いが含まれるため,拘束力は低いものの,より幅広い患者を対象とした文書と考えられる.なお,リコメンデーションの和訳は「推奨」であって,「勧告」ではない.日本語の「勧告」は「推奨」より明らかに強く,強制力を伴う用語である.したがって,リコメンデーションを「勧告」と訳す場合は,そこに訳者の恣意的な意図が含まれると考えて良い.つまり,リコメンデーションを「勧告」と訳す場合は,その内容が訳者にとって有利な内容を含んでいて,それを強制することが訳者にとって利益をもたらすものである可能性がある.たとえば,あるリコメンデーションを勧告と題して製薬会社が資材を作成した場合は,そのリコメンデーションには,その会社の薬剤を使うように示唆されている可能性がある.このような用語の使い方にも利益相反の問題が生じる可能性があることは認識するべきである.繰り返すが,リコメンデーションは「推奨」であって「勧告」ではない.現在では,非常に多くの診療ガイドラインが作成されている.しかしながら,一概にガイドラインと言ってもその作成方法や客観性は玉石混交である.ガイドラインは日常診療に影響を与えるものであるから,正しい科学的事実に基づいて客観的に作成されるべきであり,大家の意見の羅列であってはいけない.実際にガイドラインの作成方法自体も進化している.現時点ではAppraisal of Guidelines Research &Evaluation(AGREE)に準拠して作成することが求められており,エビデンスの質の評価のみならず,作成されたガイドラインの質も評価される時代になっている.さらに進化したGrading of Recommendations,Assessment, Development and Evaluation(GRADE)法が提唱された.今回のRA診療ガイドラインJCR2014は,この最も新しいGRADE法を用いて作成した.Ⅱ 日本のRA診療ガイドライン日本におけるRA診療ガイドラインとしては,1997年に日本リウマチ財団が発行したものが最初である.これはリウマチ科の自由標榜が認められたことを契機としてレベル1の方法で作成されたものである.2004年にはこの改訂版が日本リウマチ財団から出版された.これは1999年から開始された厚生労働省エビデンスに基づく診療ガイドライン作成研究班(班長:越智隆弘)により作成したものである.RA領域のエビデンスが十分でなく,あくまで初版を改訂することを基本として作成された.ただし,薬物療法の分野に関しては系統的文献検索を行ったうえで推奨度を決定した.Ⅲ 関節リウマチ診療ガイドラインJCR2014の作成しかしながら,2004年以降,多くの生物学的製剤(bDMARD)が使用可能となり,RA診療は大きく変貌した.現時点では2004年のガイドラインの内容は現在の日常診療で応用できるものではなく,過去のものとなった感が強い.このような背景もあって,2011年度より厚生労働省研究班(わが国における関節リウマチ治療の標準化に関する多層的研究,研究代表者・宮坂信之)の分科会として関節リウマチ診療ガイドライン作成分科会が立ち上げられた.筆者が分科会長として作成に携わり,京都大学・中山健夫教授の指導で,最も新しいガイドライン作成法であるGRADE法を用いて作成した.GRADE法はエビデンスに基づくが,エビデンスレベルのみでは推奨を決めず,他の要素も勘案したうえで推奨度を決定する.そこには患者の意見が入っているというのが画期的なことである.そして3年間の歳月を経て2014年10月に日本リウマチ学会から「関節リウマチ診療ガイドラインJCR2014」として出版された.発表前には日本リウマチ学会の会員からのパブリックコメントに基づいて修正が加えられ,また利益相反マネージメントを行った.このガイドラインはRA診療を専門的に行う医師を