カレントテラピー 33-8 サンプル

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8 Current Therapy 2015 Vol.33 No.8744Ⅰ 診療ガイドラインとは診療ガイドラインとは,「特定の臨床状況において,適切な判断を行うため,臨床家と患者を支援する目的で(assist practitioner and patient decisions)系統的に作成された文書」(米国医学研究所 Instituteof Medicine, 1990)と定義されている.ガイドライン(指針)に類する表現として,指令(directive),規制(regulations),推奨(recommendation)などがあるが,一般的には規制(regulations)>指令(directive)>推奨(recommendation)>or=指針(guideline)の順でより遵守が求められると考えられる.歴史的に見ると,診療ガイドラインはその名称から「拘束力をもつ」ものと暗黙のうちに了解されてきた1).しかしながら,上記の表現で明らかなように,ガイドラインはあくまで臨床的判断を「支援」するものであり,拘束するものでもなければ規制するものでもない.また多彩な症例が混在する臨床の現場においては不確実性のなかで診療が行われており,すべての診療がガイドライン通りに行われることはありえない.ガイドライン通りに行った結果が不幸な転機を取る可能性もあり,ガイドラインに強制力をもたせることは不可能である.したがってガイドラインの内容が医師の裁量権を侵すものでもないし,ガイドライン通りの治療を選択しないことを理由として医師が責任を問われることもあってはならない.関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)の領域においては,ガイドライン(指針)とリコメンデーション(推奨)が混在しており,この両者はどう違うのか,多くの人々がもつ疑問である.北米ではガイドライン(指針)とリコメンデーション(推奨)は同等とされているが,米国リウマチ学会(ACR)が* 東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター所長進化するリウマチ治療― 診療ガイドライン2014からさらなる進化へ関節リウマチ診療ガイドラインJCR2014山中 寿*急速に進歩した関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)診療の標準化を図ることを目的として,関節リウマチ診療ガイドラインJCR2014が作成され,2014年10月に発表された.このガイドラインは,最も新しいGrading of Recommendations, Assessment, Development andEvaluation(GRADE)法を用い,エビデンスのみならず,患者の意見も取り入れて推奨度が決定された画期的なものである.総論は欧州リウマチ学会(EULAR)ガイドラインを日本における日常診療に準用し,各論は頻用される各種薬剤について,既存のシステマティックレビューに新たな追加解析を加えて,合計37の推奨文が決定された.このガイドラインに書かれている薬物療法や手術,リハビリなどの多くの診療手段をご理解いただいたうえで,治療方針について患者と話し合い,Shared decision making,協同的意思決定を行うことが重要と考える.