カレントテラピー 33-8 サンプル page 27/32
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カレントテラピー 33-8 サンプル
Current Therapy 2015 Vol.33 No.8 89825関節リウマチの疾患関連遺伝子東京大学医学部アレルギー・リウマチ内科教授 山本一彦関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)など免疫が関与する疾患は,一部はまれな遺伝子変異による遺伝性疾患であるが,多くは遺伝因子,環境因子など複数の要因が働いて発症する.以前より,主要組織適合遺伝子複合体HLA をはじめいくつかの疾患関連遺伝子が報告されていたが,最近になりゲノムワイド関連解析(genome -wide association study:GWAS)を用いて多くの疾患の疾患関連遺伝子の解析が進められている.RAにおいてHLA領域で強い関連を示しているのはクラスⅡ分子のHLA-DR1, DR4 である.さらに,詳細にはDR抗原のβ鎖をコードするHLA-DRB1 の対立遺伝子*01:01, 04:01, 04:04, 04:05などが関連していることが報告されている.そして,これらの対立遺伝子において超可変領域に相当する第70- 74残基が共通のアミノ酸配列であることが判明し,shared epitope(SE)仮説が提唱されていた.しかし最近の詳細な研究では,SEだけでなく,むしろ第11と13残基のアミノ酸配列が強い影響力をもつことが判明している.ただし,RAの感受性多型をもつクラスⅡ分子のアミノ酸配列が,RAの特異抗原のエピトープを結合し提示しやすいという考え方には変わりない.2007年以降,GWASが多く報告され,RAの疾患関連遺伝子として報告される数が急増している.ただし,それぞれのGWASは,サンプル数の関係で検出力が十分でないため,複数のGWASデータを統合したメタ解析が行われるようになった.最近,岡田らは,これまで行われたRAに関係するGWASデータを統合し,特にアジア人と欧米人集団を中心にRA患者3万人とコントロール7万人を解析した(Okada Y, etal:Nature 506:376- 381 , 2014).その結果42領域が新たにRAに関連することがわかり,今までに報告されたものを合わせて全体で101の遺伝子領域がRAの疾患関連遺伝子領域であることを明らかにした.さらにこの領域内の遺伝子と多様な生物学的データベースの網羅的な照合を行い,関連遺伝子の一部が原発性免疫不全やリンパ腫の関連遺伝子と有意に重複していることを見出した.これは,これらのRA関連遺伝子が免疫的機能またはリンパ球の増殖に関与していることを考えると理解できる.さらにRAの疾患関連遺伝子多型が,制御性T細胞の遺伝子発現を調節するヒストン修飾領域と重複する率が高いこと,T細胞,B細胞,サイトカインシグナルに関連したパスウェイの遺伝子に集積していることなどを見出した.そして,創薬データベースに登録されている種々の疾患における治療薬のターゲット遺伝子との関係を調べたところ,RAの疾患関連遺伝子が蛋白質間相互作用のネットワークを介して,すでに使われているRAの治療薬の標的遺伝子と有意に結びついていることを見出した.これらの発見は,RAの病態理解に重要な情報を提供するだけでなく,GWASを用いた新たなゲノム創薬の可能性を示すものである.進化するリウマチ治療― 診療ガイドライン2014からさらなる進化へ