カレントテラピー 33-8 サンプル

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60 Current Therapy 2015 Vol.33 No.8796Ⅰ はじめに近年は,関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)治療の進歩によって関節症状の軽減と関節破壊の進行抑制が可能となった.新規治療薬として登場した生物学的製剤や低分子化合物の使用により,関節症状が劇的に改善し寛解を達成する患者もみられている.しかし一方,RAは慢性疾患で治療の継続が必要なことから,毎月高額な薬剤費がかかるうえ,治療薬の有効性や安全性を確認するために頻回な検査も実施される.年金生活の高齢者や,教育費や生活費に収入をあてて高額な治療費を捻出できない方などに対して,新規治療薬を使用したくても費用面から断念せざるをえず,治療方針の理想と現実に悩まされたリウマチ専門医は少なくないだろう.医療費負担の軽減を目的とした公的支援には,医療保険制度や障害者福祉制度,特定医療費支給制度,医療費控除がある.また,関節痛や身体機能障害で日常生活が不自由な患者への福祉制度として,身体障害者手帳保持による福祉サービスや,介護保険制度による介護サービスがある.本稿では,RA患者が利用できる各医療福祉制度について解説するとともに,2015年の改正点についても触れてみたい.Ⅱ 医療保険制度1 高額療養費制度1)医療機関や薬局の窓口で支払った額が,ひと月の自己負担限度額以上になった場合に,超えた金額を支給する制度である.ひと月あたりの窓口支払いの上限額は年齢や所得に応じて異なる.高額な外来診療を受ける予定がある患者は加入する健康保険組合* 埼玉医科大学リウマチ膠原病科准教授進化するリウマチ治療― 診療ガイドライン2014からさらなる進化へ医療福祉制度舟久保ゆう*関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)は原因不明の慢性疾患で治療が長期にわたることから,医療福祉制度によって金銭面と生活面でさまざまなサポートを受けることができる.医療費負担の軽減を目的とした公的支援として,高額療養費制度,特定医療費(指定難病)助成制度,障害者福祉制度,税制度(医療費控除)などがある.また,関節痛や機能障害により日常生活が不自由な場合は,要介護度に応じた介護サービスや,身体機能障害度に応じた福祉サービスを利用することができる.近年は,生物学的製剤のような新規治療薬の登場によりRAの寛解を達成,維持できるようになったが,一方で高額な薬剤費や頻回の検査費用で医療費の負担は増す一方である.各医療福祉制度を十分に把握し有効活用して,医療費や生活の負担を軽減すれば,患者が安心して療養生活を送る助けになるだろう.