カレントテラピー 33-7 サンプル

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Current Therapy 2015 Vol.33 No.7 96494. 総合診療専門医を基本領域の一つとして位置づける.この基本骨格のほか,いくつかの留意点が報告書に付記された.すなわち,①専門医制度は「プロフェッショナルオートノミー」を基盤にして設計される者であること,②新たに設立される中立的第三者機関はそれぞれの診療領域の専門学会と密接に連携を図ること,③専門医の広告制度を見直し,中立的第三者機関が認定する専門医のみを広告可能にすること,そして最後に④「新たな専門医制度の実施に際しては地域医療に十分に配慮する必要がある」こと,が付け加えられた.初期臨床研修制度が発足して以来,地域医療の格差が大きくなり早急に解決すべき課題としてその対策が真剣に考えられているもののなかなかよい解決策が見出せない状況が続いている.専門医制度改革の目指すところは,すでに述べたように「専門医の質の向上」と「患者視点に立った医療体制の整備」であり「地域医療の改善」を直接の目的とするものではないのだが,少なくとも新たな専門医制度の実施により,地域医療がますます混乱をきたすようなことにならないように,できれば地域医療の改善の手助けになるような制度設計が望まれるという意見である.Ⅱ 専門医制度の意義専門医制度の意義は今さら述べるまでもないが,①研修プログラムの充実により医師の質の向上が期待できる,②医師が自ら修得した知識・技術・態度などについて認定を受け,それを社会に開示できる,③患者さんが診療を受けるに際して医師の専門性を判断できる,④医師の役割分担を進めることにより効率的な医療制度の確立に役立つ,などであろう.我が国の医療は,国民皆保険を確立したうえに,世界に冠たる長寿国であり,新生児死亡は最も低いなどWHOから高い評価を受ける医療制度をこれまで堅持して来ている.一方,未曾有の少子高齢化社会を迎える我が国のこれからの医療制度をどのように再構築して行くか,その対策は必ずしも十分に考えられているとはいえない.高齢者は当然のことにmultimorbidであり,一人の患者が多くの疾患を抱えている.これまで治療が満足に行えなかった疾患,“unmet medical needs”を解決すべく医学会,薬学会,企業が一体となった努力を続けた結果,一定の成果を生みつつあるが,これらの新たな治療法の開発は当然のこととして医療費の高騰に繋がってくる.この医療費を誰が,どのような仕組みで負担をするかという議論は避けて通れないところであろう.21 世紀は「生命科学の時代」「医療の時代」と言われており,まさにこの領域の進歩には目を見張るものがある.当然のことながら医学部で学んだ後,若い医師の多くが最先端医療の担い手になろうとの強い希望をもつようになる.このことは我が国の医学・医療が世界の最先端を走り続けるのに欠くことができないものであり,若い医師ができる限り早く,より特化した専門領域の学問・診療に足を踏み入れたいと希望することは十分に理解できる.しかしここで立ち止まって考えると,最先端医学・医療での成果を生むためには一見遠回りかもしれないがリベラルアーツを学び,基本的で確かな医学・医療の知識・技術・態度を学ぶ必要がある.例えば,内科領域の専門医を考えたとき,それぞれのサブスペシャルティを学ぶにしてもしっかりとした内科全般の知識・診療技術・態度を身につける必要があり,この度日本内科学会がその専門医制度の大きな改革に踏み切ったことのもつ意味は大きいと思う.Ⅲ 「総合診療専門医」新設の意義この度の専門医制度改革の大きな柱のひとつが「総合診療専門医」の新設である.「総合診療専門医」の医師像,それらを育成するための研修システムのあり方等については本特集で十分に記述されるので,ここではなぜ「総合診療専門医」を19番目の基本領域専門医として位置づけることになったのかについて述べたい.