カレントテラピー 33-6 サンプル page 4/32
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カレントテラピー 33-6 サンプル
Current Therapy 2015 Vol.33 No.6 7543慢性咳嗽― しつこい咳に潜む疾患―企画自治医科大学内科学講座呼吸器内科学部門教授杉山幸比古内科の日常診療のなかで,患者数の多い訴えのひとつに慢性咳嗽が挙げられるであろう.その結果として,呼吸器専門外来へも慢性の咳嗽を主訴に近くの開業の先生方から紹介されてくる方々も非常に多い.欧米では,この慢性咳嗽の原因として50%以上を咳喘息が占め,さらに慢性副鼻腔炎に関連した後鼻漏による咳,胃食道逆流症(gastroesophageal reflux disease:GERD)による咳の3つが三大原因とされている.しかしながら,日本では体格の相異もあるのだろうが,GERDによる咳はそれ程多くない印象があるし,近年マクロライド療法の普及により,慢性副鼻腔炎も減っており,後鼻漏による咳も余りみなくなっている.日本では圧倒的に咳喘息が多く,そこに少しかぶってくるのが気管支炎後の遷延性咳嗽という印象である.マイコプラズマによる長い咳,大人の百日咳といった感染症による咳も,相変わらず重要である.疾患にも時代的変遷があり,20年程前では中高年の女性の慢性乾性咳嗽として高血圧治療薬のACE阻害薬による副作用の頻度がかなり高かったが,近年では消失した.ACE阻害薬の世代交代により,副作用としての咳が消失したと考えられる.咳喘息に似たタイプとして,アトピー咳嗽という概念が日本では用いられている.時に吸入ステロイドがあまり効かない例があり,こういったタイプの存在が示唆されることがある.そういったなか,まれではあるが絶対に忘れてはならないのが悪性腫瘍と結核による咳である.中枢型の腺癌のなかには,きれいに縦隔内のみにおさまり,胸部単純写真ではふと,見逃してしまう主気管支の一部分のみの狭窄を当初示す例がある.また,気管・気管支結核のなかには,どうみても胸部単純写真では異常を指摘し得ない例があり,大量に排菌することから,早期発見が公衆衛生上もきわめて重要である.これらを注意深く鑑別していっても,どうしても診断がつかず,さまざまな治療に対しての反応もないという例が,日々の臨床では時に存在する.中高年の女性に多い印象であるが,のどの奥のほうに違和感を訴えられる.こういった例は咽喉頭異常感症に伴う心因性の咳嗽が考えられる訳であるが,もちろん,悪性疾患や結核等の鑑別を最後まで油断せずに行う必要がある.こういった例に対しては,漢方の知識が役に立つことがあり,漢方の力を思い知ることがある.本特集でのさまざまな知見,経験談が皆様の日々の臨床に少しでもお役に立つことを祈っている.エディトリアル