カレントテラピー 33-6 サンプル page 21/32
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カレントテラピー 33-6 サンプル
80 Current Therapy 2015 Vol.33 No.6616Ⅰ はじめに咳嗽が発生する病態として,①気道に侵入する異物や病原体,分泌物などによる気道壁表層への刺激,②アトピー咳嗽や胃食道逆流症,アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬などによる咳受容体感受性の亢進,③喘息など気道平滑筋の収縮,④心因性咳嗽などによる大脳皮質への直接刺激などが挙げられ,その機序は多様である.これらのさまざまな機序を背景にもつ咳嗽の治療は,一般的な中枢性鎮咳薬をはじめとして去痰薬,吸入ステロイド,抗アレルギー薬,気管支拡張薬,潰瘍治療薬などが用いられている.本稿では表1 1)にあるような咳嗽治療薬について,湿性咳嗽ならびに乾性咳嗽に大別し,その病態を考慮しながらの使い分けについて概説したい.Ⅱ 湿性咳嗽に対する治療薬慢性の湿性咳嗽の主な原因疾患を表2に示す.これらの疾患は,気道に侵入する異物,病原体,分泌物などにより,気道壁表層が刺激されることで咳嗽が誘発される病態が主である.これらの病態は喀痰を伴う湿性咳嗽を誘発するが,その治療として気道内分泌物の抑制や喀痰の排出を手助けする治療薬が適応となり,咳嗽反射を抑制するような中枢性鎮咳薬は適応にはならない.また,各疾患に対する個々の治療も当然のことながら必須となる.1 去痰薬1)カルボシステイン(ムコダインR)喀痰中のシラル酸とフコースの構成比を正常化することで痰を適切な粘性にし,さらに気管支粘膜上皮の線毛細胞の修復を促進することで過剰な粘性産生を抑制し去痰作用を発揮する.また,副鼻腔に対し鎮咳薬概論大塚健悟*1・福永興壱*2・別役智子*3*1 慶應義塾大学医学部呼吸器内科助教*2 慶應義塾大学医学部呼吸器内科講師*3 慶應義塾大学医学部呼吸器内科教授慢性咳嗽―しつこい咳に潜む疾患咳嗽には大きく分けて乾性咳嗽と湿性咳嗽があるが,その原因として,異物,病原体による炎症,分泌物などによる気道壁表層への刺激,喘息にみられるような平滑筋の収縮,胃食道逆流症による刺激,アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬など薬物による咳受容体感受性の亢進,心因性によって引き起こされる咳嗽,慢性感染などがあり,その病因は多様である.そしてその治療は病態を考慮して中枢性鎮咳薬をはじめ,去痰薬,吸入ステロイド,抗アレルギー薬,気管支拡張薬,潰瘍治療薬,抗菌薬などを用いて時に薬剤を組み合わせながら行う.すなわち咳嗽治療は漫然と鎮咳薬を投与するのではなく,原因となる疾患を十分に考え必要に応じて検査を行い,鑑別を進めながら適切な治療を施すことが重要である.a b s t r a c t