カレントテラピー 33-6 サンプル page 18/32
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カレントテラピー 33-6 サンプル
Current Therapy 2015 Vol.33 No.6 77代替療法6132 感染後咳嗽・慢性気管支炎・気管支拡張症かぜ症候群の後,咳嗽のみが残存する遷延性咳嗽には,アレルギー素因がなければ感染後咳嗽を考える.漢方薬の第一選択は麦門冬湯あるいは清セイ肺ハイ湯トウであろう.1)麦門冬湯痰の出ない,乾いた咳嗽を目標とする.典型例では顔を真赤にして咳込む例が多く,痰は少ない.口や皮膚に乾燥傾向がある.解熱したにもかかわらず,乾性咳嗽の持続する症例が適応である.全身状態はそう悪くない段階である.少陽病,虚証.作用機序:抗炎症作用を有する末梢性鎮咳薬である.気管支に炎症のあるときに発揮され,炎症のないときには発現しない.気道過敏性を抑制するとの指摘もある.しかし,急性肺炎,急性気管支炎など発熱を伴う状態には用いない.報告:麦門冬湯に関するエビデンスは多い.感染後,肺癌術後の遷延性咳嗽に関する報告がある3).感染後遷延性咳嗽に対して麦門冬湯を経口β刺激薬に加えて投与したところ,非投与群に比較して投与4日目と5日目の咳スコアを有意に低下させた4).2)清肺湯感染後咳嗽が持続する例や長期間咳嗽が続き声の枯れる例,あるいは肺炎後に炎症が残存する例によい.作用機序:下気道感染の改善作用として,肺炎患者の喀痰あるいは肺組織の活性酸素放出の抑制,slow reacting substance of anaphylaxis(SRS-A)遊離の抑制,ロイコトリエンB4産生の抑制が指摘されている.気道クリアランス改善作用として,サーファクタント分泌の増加,粘液線毛輸送能の促進,痰の粘稠性の促進が報告されている.再発する誤嚥性肺炎の予防効果が指摘されている5).3)柴サイ胡コ桂ケイ枝シ乾カン姜キョウ湯トウ微熱が持続し,のぼせ,口唇の乾き,上半身の発汗,足の冷え,腹診にて軽度の胸脇苦満,臍下悸などを認める例によい.われわれの経験では慢性気管支炎,気管支拡張症,胸郭形成術後の呼吸不全の症例にて咳嗽(および微熱)の改善を認めた.4)滋ジ陰イン降コウ火カ湯トウ口腔~咽喉粘膜が浅黒く,乾いている患者の乾性咳嗽によい.皮膚も乾燥傾向がある.麦門冬湯証に似るが,より乾燥し,やせのみられる例によい.5)竹チク?ジョ温ウン胆タン湯トウ気分の停滞(気滞)を伴った湿性咳嗽を治す.典型例は,胆が虚して,少しのことにも思い煩って眠れない精神症状と遷延性の咳嗽の両方を有する症例である.また小児のインフルエンザ後の咳嗽に有効との報告もある.3 胃食道逆流症(gastro-esophageal refluxdisease:GERD)による咳嗽胃酸や胃内容物の逆流により生じた食道外症状としての咳嗽を指す.1)半夏厚朴湯咽喉違和感に対する薬として知られている.吐き気,めまい,舌痛にもよい場合がある.こうした症状の背後に不安を有する例には鎮静的に作用する.また,咽喉頭のサブスタンスP が増加し,嚥下反射,咳嗽反射を一定程度改善させることから,誤嚥性肺炎の予防効果が期待されている.高齢者で最近むせやすい,あるいは飲み込みが悪くなった症例には投与を検討してほしい.構成生薬は半夏,生姜,茯苓に鎮静作用のある紫蘇葉,厚朴の五味である.前三者は小ショウ半ハン夏ゲ加カ茯ブク苓リョウ湯トウであり,つわりに用いられてきた薬であることを思えば,この方剤を作製した古人は咽喉違和感の原因が胃食道逆流にあることを理解していたと思われる.2)柴朴湯小柴胡湯と半夏厚朴湯の合方である.咽喉違和感に胸脇苦満を認める例で用いる.4 COPD 患者の咳嗽COPD 患者の咳嗽に対しては,息切れの改善にも配慮する必要がある.1)八ハチ味ミ地ジ黄オウ丸ガン八味地黄丸の12週投与は慢性喘息患者のピークフロー値を軽度(50~100 L/分)上昇させ,喘鳴,咳嗽を改善させた.漢方医学では加齢によって出現してくる諸症状を,すなわち腰以下の脱力,しびれ,疼痛,夜間頻尿,