カレントテラピー 33-6 サンプル

カレントテラピー 33-6 サンプル page 16/32

電子ブックを開く

このページは カレントテラピー 33-6 サンプル の電子ブックに掲載されている16ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「電子ブックを開く」をクリックすると今すぐ対象ページへ移動します。

概要:
カレントテラピー 33-6 サンプル

Current Therapy 2015 Vol.33 No.6 75611Ⅰ はじめに咳嗽は発症からの期間で,3 週以内の急性咳嗽,3~8 週の遷延性咳嗽,8 週間以上の慢性咳嗽に分けられる.このうち本稿では遷延性咳嗽と慢性咳嗽に対する漢方治療について述べる.日本呼吸器学会の『咳嗽に関するガイドライン(第2版)』に掲載されている漢方薬は小ショウ青セイ竜リュウ湯トウと麦バク門モン冬トウ湯トウだけであるが,その他にも多くの有効な方剤がある.漢方薬は伝統医学的診断基準に従って用いられるときに最も副作用が少なく,効果が高いとされている.一方,ここ30年の間に多くの呼吸器内科医の努力の結果,疾患ごとに使用できる漢方薬の傾向も明らかになってきた.本稿は,読者の方が,エビデンスを踏まえたうえで,漢方医学的病態を考慮した処方選択ができるよう期待するものである.なお,本文末に漢方医学的診断に関する解説を付した.Ⅱ 漢方治療の適応筆者らが慢性咳嗽に対して漢方薬を用いる場合は下記のとおりであるが,近年は患者の希望にて初診時より漢方薬を服用する場合も増えている.1) 現代医学的診断がなされていて,最初の西洋薬治療にて十分な臨床効果の得られない場合2)副作用などにて西洋薬を用い難い場合3)患者の強い希望*1 東京女子医科大学東洋医学研究所教授*2 千葉大学大学院医学研究院呼吸器内科学教授慢性咳嗽―しつこい咳に潜む疾患咳と漢方治療伊藤 隆*1・巽 浩一郎*2咳に有効な漢方薬は,学会のガイドラインにある小ショウ青セイ竜リュウ湯トウと麦バク門モン冬トウ湯トウ以外にも多くの有効な方剤がある.近年エビデンスの集積とともに,漢方医学的診断の有用性が認識されつつある.咳喘息・アトピー咳嗽に対しては,麻マ 黄オウ剤,柴サイ朴ボク湯トウなどとともに,茯ブク苓リョウ杏キョウ仁ニン甘カン草ゾウ湯トウ(煎薬)と類縁の苓リョウ甘カン姜キョウ味ミ辛シン夏ゲ 仁ニン湯トウが注目される.感染後咳嗽,慢性気管支炎,気管支拡張症には麦門冬湯あるいは清セイ肺ハイ湯トウが用いられるが,柴サイ胡コ 桂ケイ枝シ 乾カン姜キョウ湯トウまで使用できるとよい.また,胃食道逆流症による咳嗽には半ハン夏ゲ厚コウ朴ボク湯トウなどの嘔吐に対する薬を基本に考える.慢性閉塞性肺疾患患者の咳嗽には息切れに対する配慮が必要であり,八ハチ味ミ地ジ黄オウ丸ガンあるいは補ホ 中チュウ益エッ気キ 湯トウに麦門冬湯を併用する方式が有用であるが,苓甘姜味辛夏仁湯も有用である.慢性副鼻腔炎,後鼻漏症候群では葛カッ根コン湯トウ加カ 川セン?キュウ辛シン夷イ に反応しない症例において治療困難な例が多く,漢方医学的診断を要する.最後に漢方医学的用語を解説した.